全国の書店員が「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ「2021年本屋大賞」に町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)が選ばれ、4月14日に授賞式が開かれた。あわせて翻訳小説部門の結果も発表され、ディーリア・オーエンズ(著)/友廣純(訳)『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)が1位となった。発掘部門「超発掘本!」には、みうらじゅん『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)が選ばれた。授賞式の模様はYouTubeでライブ配信した。
書店員が投票で選ぶ「いちばん!売りたい本」
全国の書店員がもっとも売りたい本を選ぶ本屋大賞は、今年で18回目を迎える。「2021年本屋大賞」の対象作品は2019年12月1日~20年11月30日に刊行された日本の小説。投票できるのは、新刊を扱っている書店の書店員。
一次投票でノミネート10作品を選出し、二次投票はノミネート作品をすべて読んだうえで、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票が行われた。
『52ヘルツのクジラたち』が365・5点を獲得し、大賞に輝いた。著者の町田氏は「読者に一番近いところで、ずっと応援し続けてくれた書店員の皆さん。そうした沢山の人たちの想いが乗った本を受け取ってくれた読者のおかげだと思っている」と感謝を伝えた。
受賞の喜びよりもプレッシャーのほうが大きいと語りつつも、「賞に見合う作品だと信じて投票した書店員さんや応援してくれた方々がたくさんいる。背筋を伸ばして、賞を受け取り、今後も精進していきたい」と所信を述べた。
2位は青山美智子『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)で287・5点、3位は伊吹有喜『犬がいた季節』(双葉社)で286・5点だった。
翻訳小説部門の1位『ザリガニの鳴くところ』
翻訳小説部門の1位に選ばれた『ザリガニの鳴くところ』の著者・オーエンズ氏はビデオメッセーを寄せた。
オーエンズ氏はコロナ禍に言及し、「この作品には色々な要素があるが、その一つが『孤独だ』だ。人とつながろうとする大切さについても描いた。そして、人間には問題を解決する力と治癒力が備わっていることも伝えている」と紹介。出版社や翻訳者などに関係者に感謝を述べた。授賞式では翻訳を担当した友廣純氏が出席し、記念トロフィーが手渡された。オーエンズ氏にも後日、記念トロフィーが贈られる。
発掘部門「超発掘本!」は『「ない仕事」の作り方』に
発掘部門「超発掘本!」には『「ない仕事」の作り方』が選ばれた。著者のみうらじゅん氏が授賞式に出席し、「小学生のころから映画館と本屋は僕のシェルターだった。長く居座って、本屋で本を発掘するのが好きだった」と本屋好きのエピソードを紹介。逆に自身が発掘される立場となって、「とても嬉しく、感謝している。受賞した本は刊行してからしばらく経つ。長い眠りから覚めたミイラのような気持ちだ」と受賞を喜んだ。
また、同書を推薦した丸善博多店の脊戸真由美氏が、推薦理由をビデオメッセージで語った。
本屋大賞と翻訳小説部門の順位は次の通り。なお、本屋大賞の5位と6位は総得点が同点だったため、内訳で1位票数の多かったほうを上位とした。
▼2021年度本屋大賞
▽1位=町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)
▽2位=青山美智子『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)
▽3位=伊吹有喜『犬がいた季節』(双葉社)
▽4位=伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(集英社)
▽5位=山本文緒『自転しながら公転する』(新潮社)
▽6位=伊与原新『八月の銀の雪』(新潮社)
▽7位=凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』(中央公論新社)
▽8位=加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)
▽9位=宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)
▽10位=深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
▼翻訳小説部門
▽1位=ディーリア・オーエンズ(著)/友廣 純(訳)『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)
▽2位=ジャン=クロード・グランベール(著)/河野万里子(訳)『神さまの貨物』(ポプラ社)
▽3位=ラーラ・プレスコット(著)/吉澤康子(訳)『あの本は読まれているか』(東京創元社)