書店の倒産が急減、2020年度は過去最少を更新 帝国データバンク調べ

2021年5月7日

書店の倒産は12件で、過去最少を更新した(帝国データバンク調べ)

 

 帝国データバンクはこのほど、2020年度の書店倒産が過去最少を更新したと発表した。同社の調査によると、20年度の書店倒産は12件、昨年の24件を大幅に下回って3年ぶりの減少となり、これまで最も少なかった17年度の16件を4件下回り、過去最少を記録した。調査は負債額1000万円以上の法的整理が対象。

 

 同社は「『活字離れ』をはじめ、紙書籍の需要減を背景に苦戦を強いられてきた書店業界が、ここにきて持ち直しの動きを見せている」と分析。書店業界はこれまで、ネット書店の台頭や電子書籍などデジタル化で、中小書店を中心に倒産は増加傾向にあったという。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもりの追い風を受け、自己啓発や参考書などの教養本、コミックの需要が急増している。

 

『鬼滅の刃』『呪術廻戦』など相次ぐヒットで恩恵

『鬼滅の刃』クラスのメガヒットが、20年度の書店経営を下支えした

 

 昨年10月に劇場版が公開された『鬼滅の刃』(集英社)が爆発的ヒットとなったことに加え、『呪術廻戦』(同)といったヒットタイトルが追い風となった。「人気コミックに引っ張られて客数が増えた」など、書店によってはコミックの売り上げが前年から1割以上増加したケースもあり、経営に持ち直しの動きもみられているという。

 

コミックの店頭売り上げは18カ月連続で増加、 「鬼滅の刃」などの大ヒットも寄与した

 

 出版取次大手の日本出版販売がまとめた調査によると、取引書店の20年3月店頭売り上げは前年比96.6%だった。学習参考書などが好調だった昨年同時期の反動から前年を下回ったものの、2月までに集計以来、初めてとなる10カ月連続での前年超えを記録した。

 

 『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などが好調なコミックは、3月時点で18カ月連続での前年超えとなるなど高水準で推移している。出版科学研究所の調査でも、紙と電子を合わせたコミック市場の推定販売金額が6126億円に達し、25年ぶりに過去最高を更新している。

 

自宅の娯楽変化も一因、読書が“動画視聴”と並ぶ

 

 GEM Partnersが、新型コロナの流行・自粛前後で増えた自宅でのエンターテイメントについて約4000人に調査を行ったところ、本・マンガなどの読書は全体の1割超が「コロナ後に増えた」または「初めてした」と回答した。Netflixをはじめ、月額定額制のネット配信サービスなどを利用する動画視聴の割合と並ぶなど、書籍に触れるケースが増えている。



 ただ、こうした恩恵を受けたのは駐車場を備えた郊外型のロードサイド店舗や地域密着型書店など中小書店に限られる。オフィス街や鉄道ターミナル駅、緊急事態宣言の度重なる発出で休業や時短要請対象となった百貨店や大型ショッピングセンターなど、複合商業施設を商圏の中心とした書店では集客が伸び悩む。都心部に大規模な旗艦店舗を有する大型店ではその傾向が強まった。

 

書籍全体では微増のなか、 電子書籍やオンライン書店への客足が伸びる

 

 総務省が行った調査によると、電子書籍への支出額(12カ月移動平均値)は21年1月時点で約150円となり、過去5年間で4倍に急増した。インターネットを経由したオンライン書店などでの書籍購入額も400円を超え、過去5年で2倍の水準に増加している。両者とも19年度以降は書籍全体の需要低迷から伸び悩みもみられたものの、人との接触を避けることができるネット経由での購買や、スマホやタブレットで購読する傾向が急激に強まっている。