メディアドゥと光和コンピューター 電子書籍管理で共同開発、紙と電子の出版「ERP」目指す

2021年5月12日

実証実験で使用したシステム(画面は開発中のもの)

11月に本格サービスイン

 

 メディアドゥと光和コンピューターは5月11日、電子書籍の売上印税管理システム「PUBNAVI(パブナビ)」を共同開発し、11月に本格サービスインすると発表した。サービスイン後は紙書籍の売上印税管理などの機能拡充に取り組み、本格的な「出版ERP(出版社向け基幹システム)」へと発展させていく。ネット環境があればどこでも利用でき、中・小規模の出版社も安価に導入できるSaaS型で提供する。

 

 「PUBNAVI」は紙よりも複雑な電子書籍の印税処理を正確に行い、さらに紙書籍と合わせた支払通知の作成なども可能な出版社の事務作業効率化とコスト削減を実現するサービス。

 

 「電子書籍販売管理」「印税計算」「印税支払管理」などの機能を備えており、「電子書籍販売管理」は電子取次や電子書店ごとに異なる報告データをドラッグアンドドロップすることでシステムに取り込むことができ、メディアドゥが取り次ぐ売り上げについては自動連携できるほか、確定値だけでなく速報値でも売上分析が可能。

 

 「電子書籍印税計算」は、入金ベース、売上ベース、単価×ダウンロード数ベースに対応し、単品だけではなく読み放題、レンタルなどの販売形態にも対応する。印税率を期間指定で変更することもできる。

 

 「印税支払管理」は計算データから支払先ごとの支払報告書(PDF)を作成。計算済みの紙書籍の支払情報を取り込むことで電子と紙を統合した報告書も作成できる。また、印税以外のデザイン料や原稿料などにも対応。ダイレクトバンキング用の全銀フォーマットが出力でき、支払通知・源泉額算出・支払調書といった源泉関連書類の出力にも対応する。

 

 今後は電子書籍の販売・印税管理に続き、紙書籍の販売と印税管理、制作管理、著者向けの報告サービスなどの機能を拡充し、本格的な「出版ERP」に発展させる。

 

 光和コンピューターは創業から30年にわたり出版社300社以上に出版社向け基幹システムなどサービスを提供してきた。一方、メディアドゥグループは今年2月に北米で出版社ERPシステムを150社以上に提供しているFirebrand Groupを買収した。

 

 両社は2020年6月から「PUBNAVI」の共同開発に取り組み、20年12月から実証実験を実施。実験にはジャイブ、秀和システム、竹書房の出版社3社が参加し、電子書籍管理業務のテストを行った。その結果、売り上げ取り込みや支払い処理の業務削減効果を確認できたという。今後は本格サービスインに向け、さらに多くの出版社が参加するベータ版テストを実施する。

 

 「PUBNAVI」の開発は、経済産業省の20年度「コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金(J―LOD)」の「コンテンツのサプライチェーンの生産性向上に資するシステム開発を行う事業の支援」対象に採択されている。