講談社、集英社、小学館の出版社3社は5月14日、出版流通の新会社設立に向けて、大手総合商社の丸紅と協議を開始したと発表した。新会社の主な取り組みとして「AIの活用による業務効率化事業」と「RFID活用事業」を挙げ、出版流通全体の最適化を目指すとしている。設立は2021年年内。資本構成や規模などは協議中として、明らかにしていない。
出版社3社は今回の新会社設立について「出版界は構造的な課題を抱え続けており、各部門においての改善が急務」として、「他業界におけるサプライチェーン改革の実績がある丸紅をパートナーとし、出版流通の課題を解決していくために、新会社を設立する」と説明している。
新会社が取り組む「AIの活用による業務効率化事業」では、AIを活用することで書籍・雑誌の流通情報を把握し、配本・発行等をはじめとする出版流通全体の最適化を行う。
「RFID活用事業」では、いわゆる電子タグに埋め込まれた各種の情報を用いて、在庫や販売条件の管理、棚卸しの効率化や売り場における書籍推奨サービス、万引き防止など、流通管理システムの構築・運用を進めるとしている。
文化通信の取材に対し、講談社は「AIとRFID(電子タグ)の活用事業を新会社の基盤として、出版流通の最適化を図っていく。現在は4社の協議がスタートした段階で、出版取次を代替する事業などは想定していない。このほかの事業やサービスについても4社で検討を進めている最中だ」と回答した。また、どのような形態で書籍・雑誌にRFIDを取り付けるかについても「現段階では未定」と答えた。
出版社3社は新会社の取り組みについて、「パートナーとなる丸紅に対して全面的に協力、サポートしていくだけでなく、できる限り多くの書店・販売会社および出版社に、新会社が提供する新サービスを利用してほしい」と呼びかけている。
そのうえで、「全国の書店の経営が健全化することを第一義として、出版流通全体が新しく生まれ変わることにより、読者の方々が店頭で魅力ある出版物と出会い、快適な読書環境を続けていくために、新会社の取り組みが必要と考える」とコメントした。