小学館は5月19 日、新企画発表会をオンラインで開催し、4月23日に発売した夏川草介氏の新刊『臨床の砦』を紹介した。『神様のカルテ』などを書いた夏川氏は、コロナ感染症指定病院に勤務している。2021年1月3日から2月1日までの約1カ月間、新型コロナウイルス感染症の第3波の真っただ中に、病院内で起きた出来事をリアルに伝えたいという思いから、この作品を執筆した。
第4波だからこそ必読
『臨床の砦』は、コロナ禍の最前線に立つ現役医師(作家)が、自らの経験をもとにして克明につづったドキュメント小説。小学館は「現在、3度目の緊急事態宣言が継続中で、第4波の渦中にある今こそ読んでもらいたい作品」とすすめる。
新企発表会にオンラインで参加した夏川氏は、「コロナ感染症指定病院に勤務しており、昨年始めの横浜港に到着したクルーズ船の患者から、診療を続けている。あれから1年半経つが、中でも第3波で目にした景色は、これまでに経験したことのない医療現場だった」と明かした。
そのうえで、「驚きやとまどい、迷いなどを感じる一方で、この現実が医療の外側にいる人たちに伝わっていないのではないか」と大きなギャップを感じたという。「コロナ禍で『経済』と同じくらい『医療』も大変なことを、少しでも多くの人に知ってもらいたい、伝えたい思いが強かった」と執筆した経緯を語った。
また、「コロナに立ち向かうために必要なことは2つ。みんなが力を合わせること、必ず乗り越えられるという希望を持つことだ」と訴える。「この作品はフィクションではあるものの、ウソは書いていない。この本が、コロナ対策の判断のひとつの材料になってくれればうれしい」と呼びかけた。