『おしいれのぼうけん』などを手がけた絵本作家・田畑精一氏の追悼展を開催へ

2021年5月31日

『おしいれのぼうけん』

 

 子どもたちに長く読み継がれている絵本『おしいれのぼうけん』などを作った絵本作家の田畑精一氏が亡くなってから、今年6月で1年となる。その田畑氏の画業をしのび、6月24日から29日まで東京都内で追悼展「ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道」が開催される。「14ひきのシリーズ」のいわむらかずお氏や、童心社の酒井京子会長ら有志による実行委員会が主催する。それに合わせて、同タイトルの書籍も童心社から刊行する。

 

 田畑氏は、1931年大阪生まれ。京都大学中退後、人形劇にうちこむ。その後、児童文学作家・古田足日(ふるた・たるひ)氏と出会い、子どもの本の仕事を始めた。主な作品に『おしいれのぼうけん』『ダンプえんちょうやっつけた』『ゆうちゃんのゆうは?』『ピカピカ』などのロングセラーがある。『さっちゃんのまほうのて』で赤い靴児童文化大賞を受賞。「日・中・韓 平和絵本」シリーズの呼びかけ人の一人で、自身は『さくら』を手がけた。紙芝居も数多く、『おとうさん』で高橋五山賞画家賞を受賞した。

 

 追悼展「ありがとう絵本作家・田畑精一の歩いた道」は、東京都豊島区南池袋の「ギャラリー路草」で6月24日から29日まで開催予定。

 

 ▽開館時間=11時から18時(初日は12時から。入場は17時30分まで。最終日は15時閉場)▽入場料=1000円、高校生以下無料▽問い合わせ先=童心社編集部(電話03・5976・4402)。

 

 『おしいれのぼうけん』のピエゾグラフ、先天性四肢障害児父母の会との共作『さっちゃんのまほて』など、絵本や紙芝居、読み物の挿絵の原画を約120点展示する。田畑氏が、若い頃に制作に関わった人形も展示する。なお、新型コロナウイルス感染症の状況によって、延期または中止の場合もある。

 

書籍『ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道』も刊行 童心社

『ありがとう絵本作家・田畑精一の歩いた道』□A5判変型/56㌻/定価1320円

 

 また、追悼展に合わせて、書籍『ありがとう絵本作家・田畑精一の歩いた道』(実行委員会・編)が、6月29日の取次配本で童心社から刊行される。

 

 仲間たちとともに、日本の新しい子どもの本の世界を切り拓いた田畑氏の言葉の数々を紹介。戦争を体験して、絵本作家になるまでのことや、自作絵本への想いなど、子どもの本づくりの原点を知ることができる。いわむら氏や神沢利子氏ら、田畑氏と親交の深かった子どもの本の作家のエッセイも収録。

 

『おしいれのぼうけん』など絵本制作の秘話つづった書籍

『本の力 私の絵本制作秘話』□四六判/126㌻/定価1650円

 

 ロングセラーの絵本『おしいれのぼうけん』は、1974年に童心社から刊行され、今年5月26日付の重版で247刷、計234万7000部となる。この絵本には「さく・ふるたたるひ/たばたせいいち」とある。

 

 児童文学の評論でも活躍していた作家の古田足日氏は当時、童心社編集部の酒井氏(現会長)から絵本のあり方について相談を受け、古田氏は作家と画家と編集者が「三位一体」となった絵本づくりが理想的と答え、画家に田畑精一氏を指名。そうしてできたのが『おしいれのぼうけん』だった。こういった絵本づくりの裏話などを、酒井氏自身が綴った書籍『本の力 私の絵本制作秘話』が、童心社から6月18日の取次配本で刊行される。

 

 酒井氏は、多くの優れた絵本・紙芝居を生み出してきた編集者。前述の『おしいれのぼうけん』や、大ヒットとなった「14ひきのシリーズ」など、数々の傑作はいかにして生まれたのかを、生き生きと語る。いわさきちひろ氏とのエピソードや、『原爆の絵 HIROSHIMA』制作時のエピソードなども紹介されている。