集英社インターナショナル刊行の女性作家によるノンフィクション作品が、相次いで賞を受賞している。2020年6月から21年6月までの1年間に同社刊行の3作品がそれぞれ「Yahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞」「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。ノンフィクションで女性作家が躍進している。
ノンフィクション本大賞に『エンド・オブ・ライフ』
佐々涼子『エンド・オブ・ライフ』が20年11月、「Yahoo!ニュース 本屋大賞ノンフィクション本大賞」を受賞した。
同書はベストセラー『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)、『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』(早川書房)の著者である佐々氏が、こだわり続けてきた「理想の死の迎え方」に正面から向き合った作品。難病を患う自身の母親と、彼女を自宅で献身的に看護する父親の話を交え、7年間にわたり寄り添うように見てきた終末医療の現場をつづっている。
山本美香記念国際ジャーナリスト賞に『人間の土地へ』
21年5月には、小松由佳『人間の土地へ』 が「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」を受賞した。同賞は中東シリアのアレッポでの取材中、銃弾にたおれた山本美香氏のジャーナリスト精神を引き継ぎ、果敢かつ誠実な国際報道につとめた個人に対して贈られる。
同書は、世界で最も困難な山であるK2に日本人女性として初登頂した著者と、シリア内戦に翻弄された沙漠の青年を中心に、平和な沙漠の民が内戦の大きな渦に巻き込まれていく様を、家族の一員として内側の視点から描くドキュメント作品だ。
日本エッセイスト・クラブ賞に『宿無し弘文』
21年6月には、柳田由紀子『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞した。
Appleの設立者であるスティーブ・ジョブズの「生涯の師」として革新的製品の設計思想にヒントを与えた日本人僧侶の乙川弘文氏は、なぜ故郷を捨ててアメリカに渡ったのかなど、在米ジャーナリストの著者が足かけ8年にわたる取材で突き止めた真実をまとめた。
活躍する女性ノンフィクション作家
サブスクリプション型ノンフィクションメディア「スローニュース」代表取締役社長の瀬尾傑氏は「ノンフィクションは一足早く女性の時代」と語り、ノンフィクション界に新風を吹き込む女性作家の作品が話題となっている。
また、昨年7月に創設84年の直木賞で史上初の“候補者全員女性”というニュースが話題になり、21年5月には、設立86年を迎える日本ペンクラブで桐野夏生氏が女性初の会長に就任するなど、女性作家の活躍が目立つ1年となった。