創元社(大阪市・矢部敬一社長)はこのほど、誰もが情報発信できる時代にこそ求められる校正の方法論をまとめた『校正のこころ 増補改訂第二版 積極的受け身のすすめ』(大西寿男)を発刊した。初版は2009年で、完売後は品切れとなっていたが、名著の共同復刊プロジェクトである「書物復権2021」に多数のリクエストが寄せられ、復刊に至った。
著者の大西氏は多数の出版社で文芸・人文書を中心に実用書や新書、専門書と幅広く校正を手がけ、培ってきた技術や知恵を伝えて、実人生に生かす教室も開いている。
本書は出版物の校正実務・技法にとどまらず、SNSで顔の見えない不特定多数に発信する際の留意点や、文字・言葉と向き合うことの意味について、30年以上の校正経験を踏まえて解説する。
初版刊行以降のDTPや電子媒体など技術面や、常用漢字、文字コードなどの変化に対応させ、全編にわたって改訂。さらに近年、『舟を編む』『校閲ガール』などの小説やドラマによって、出版業界で裏方中の裏方といわれる校正者にスポットが当たるようになった。
校正者自身が情報発信しはじめるなど、日本の出版校正史のなかで特筆されるこの10年の変化や大きなトピックを、新たに一章追加し書き下ろした。
創元社編集局の松浦利彦氏は、「出版業界とその周辺のメディア業界と、文字や本に関心の強い人、愛書家がコアな読者と想定される。それだけでなく、SNSで情報発信するすべての人や、企業・団体の広報担当などビジネスパーソンにも参考になるはず。
書店ではメディア論をはじめ、言葉に関するエッセイ、ビジネス書などさまざまな場所で、広く言葉に興味を持っている多くの人にお勧めしてほしい」と語る。
□四六判並製/256㌻/定価2420円
【櫻井俊宏】