支社連・古澤大治朗代表幹事に聞く 地方紙の連携こそ、地方と地方の繋がり

2021年7月5日

全国地方新聞社大阪支社連盟・古澤大治朗代表幹事(京都新聞COM)

 

 全国各地方紙の大阪支社が集結し、広告主、広告会社との関係を一層強化するべく組織された「全国地方新聞社大阪支社連盟」通称・支社連。大正から昭和に移り変わる1926年に結成され、実に95年の歴史を誇る。2021年度の代表幹事に就任した京都新聞COM大阪営業部長の古澤大治朗氏にコロナ禍における会員各社や広告市場の状況、5年後に迫った支社連100周年について話を聞いた。

【堀雅視】


100年は新聞の歴史そのもの

 

 ――90年以上を誇る伝統ある組織の代表ということで重圧などはないですか。

 

 大阪に赴任して4年目。実はそれまで支社連の存在を知らず、100年近くも存続する組織と知って驚きました。会員社44社(人)のうち、10人が幹事職に就くので4年に1度役職がまわってきます。気負っても仕方ありません。コロナ禍で活動が制限されますが、私たちができることを粛々と取り組むのみです。

 

 ――コロナ禍において会員社、地域の状況は。

 

 去年の緊急事態宣言時は当事務所も閉鎖し、私も京都の本社で勤務していました。会員各社も在宅勤務などさまざまな対応をされていましたが、中には支社長1人で運営している社や、東京、九州の支社を兼務する社もあり、苦慮されていました。

 

 街は、去年の宣言時の大阪はまるでゴーストタウン。京都も外国人はじめ観光客が激減。長年、京都に住んでいますが、「静かな京都」を久しぶりに見ました。

 

通販広告は好調

 

 ――関西、西日本の広告含めた営業状況はいかがですか。

 

 よくはありません。消費増税から続く各社(紙)の部数減にコロナ禍で拍車がかかり、当社含め購読料を上げざるを得ない状況です。広告も集客、密に繋がるものは昨年より改善されているとはいえ、自粛傾向は続いています。

 

 一方、全国的に言えますが、巣ごもり需要を背景に通信販売関係の広告は好調です。通販分野には大手も参入するなど活気づいています。減少分を補うには至っていませんが、一筋の光明と言えるかも知れません。

 

 ――ほかの面でコロナの影響は。

 

 各社、事業部門が最も甚大な影響を受けたのではないでしょうか。ご存知のように新聞社主催のイベントは数多く、各社広告にそれら協賛広告が占める割合は大きいです。本社の管轄ですが、支社の立場でも他人事ではありません。大きな痛手です。

 

 ――今期の支社連活動は。

 

 まだ新しく赴任された支社長らと顔合わせもできていない状況ですが、ワクチン接種も拡大しつつあり、全く動かないわけにはいきません。研修会など企画も進行中です。十分な感染予防対策を講じて、慎重に判断しながら活動していきます。

 

地域に根差す強み

 

 ――地方紙の存在意義について。

 

 地方紙は「地域のコンサルタント」であるべきと考えています。地元のことは地元の新聞社に聞くのが一番。当社も「京都は桜が咲いているか」、「紅葉はどうか」などよく聞かれます。そのような事象から、地方紙の中には地元の金融機関などとタッグを組んで地域密着の商社を設立した社もあります。地域に根ざした事業を展開している強みです。

 

 また、支社連のように地方紙が連携することで、地方と地方のつながりができます。地方紙を読めばその土地に行った気分になる。旅行に行けるなら、ぜひその地の地方紙を読んでほしいですね。

 

 ――京都は京セラ、村田製作所、任天堂など大企業が多い。

 

 京都の新聞社としてはもちろん誇ネスをしているというより、全国、また世界に向けて展開しています。地方紙としては、地元に向けて商売するお店や会社も大切にしていかなければなりません。

 

 京都は100年を超す老舗の店も多いですが、コロナ禍で休業を余儀なくされるなど影響は甚大です。地元の事業者を支え、応援していくのも地方紙の役目です。

 

心強い組織

 

 ――支社連100周年について。企画などは。

 

 100年は、「新聞の歴史」、「文化」そのものではないでしょうか。紙面の文字の美しさ、レイアウトの見せ方、販売、戸別配達の手際など新聞社が長年かけて修得した技術です。

 

 企画においては1年任期でもありますし、5年後となればまた異動しているかも知れません。その立場の私が100周年を語るのはおこがましいですが、大阪万博(2025年)の翌年にあたります。

 

 本来なら昨年にオリンピック、今年がワールドマスターズゲームズ(関西)と盛り上がり、その流れで万博に繋がる予定でした。コロナで1年ずつ延びて、どこまで熱を帯びるか、その熱を万博につなぐことができるか、不安もありますが、取材、広告含め、メディアの期待は大きいです。大阪が拠点の支社連としても万博と絡めた活動ができないか私の立場からでも提言していきたいですね。

 

 ――支社連の必要性。

 

 私のように赴任してから支社連のことを知ったという人は少なくありません。地方から大阪に赴任してきた支社長にとって、とても心強い存在と思います。今後も弱体化することなく、一定の影響力を発揮していきたいと考えています。

 

 ――ありがとうございました。

 


 

古澤大治朗(ふるさわ・だいじろう)氏

 1973 年生まれ、京都府出身。96 年神戸大学経営学部卒業後、京都新聞社に入社。2013 年京都新聞COM営業局営業部次長、17 年営業局大阪営業部長、21 年事業推進局大阪営業部長に就任