NPO法人・報道実務家フォーラム(瀬川至朗理事長)とスローニュース(瀬尾傑代表取締役社長)は7月7日、優れた調査報道を顕彰する「調査報道大賞」の第1回授賞作品を発表した。
大賞は読売新聞の「医学部不正入試を巡る報道」。選考委員会は「入試の女性受験者らの点数を操作し不利益に扱っているという隠された問題を記者の取材とデータ検証で明らかにした」と評価。
それに加えて「この報道を起点に問題が大きく展開し、大学入学者選抜実施要項の見直しにつながるなど、社会を変える良い結果を生んだ。訴訟をはじめ当事者がアクションを起こすきっかけともなり、ジェンダー問題を議論する今の世論にもインパクトを与えている」ことを受賞理由に挙げた。
読売新聞・渡辺氏「差別の不条理、社会に問うきっかけに」
大賞作の取材を担当した読売新聞ロサンゼルス支局長(元社会部次長)・渡辺晋氏はコメントで、「文部科学省を巡る汚職事件で、東京医科大の裏口入学の実態を追っていた私たちは2018年夏、ある取材先から驚きの証言を得た。医学部入試における女子・浪人差別――。そのうわさはあっても、表に出たことは一度もなかった」と振り返った。
そのうえで「私たちの報道をきっかけに、性別や経歴による格差の存在は他大学でも次々と明るみに出た。その後、各大学で男女の合格率の差はほぼなくなったが、今も多くの元受験生らが訴訟で大学側と争っている。女性を敬遠する風潮は医学界に限らない。今回の受賞が、差別の不条理を改めて社会に問うきっかけになってほしい」と寄せている。
優秀賞は週刊文春、共同通信、NHK
優秀賞は文字部門が週刊文春「菅首相長男違法接待問題を巡る報道」、共同通信「関西電力金品受領問題を巡る報道」、映像部門がNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」の3作品だった。
第1回調査報道大賞には、自薦他薦合わせて89作品の応募があった。対象は、ジャーナリストの調査で分かったことを報道する調査報道で、18年4月1日以後に発表されたもの、または成果が顕著にあったもの。報道実務家と選考委員会(委員長=ジャーナリスト・江川紹子氏)による審査を経て選ばれた。
授賞式は9月13日午後6時から、東京・渋谷区のSmartNewsイベントスペースで行う予定。オンラインで配信する。状況次第では授賞式自体をオンライン開催とする。