伸長し続ける電子書籍市場に対応するためには、効率的な売上管理が必須となる。メディアドゥと光和コンピューターは中小出版社向けに電子書籍全般の売上管理や、紙と電子を統合した印税管理システムPUBNAVI(パブナビ)のβ版を秋頃にリリースし、冬頃に正式版を提供する。
電子販売管理の業務軽減、効果的な販売計画へ
電子書籍は紙書籍と異なり、一度電子ストアで販売すると半永久的に売り続けることができる。絶版や品切れ重版未定がないかわりに、売上管理や印税計算、著者への支払業務も常に対応しなればならない。
現状、電子ストアの出版社への売上報告も頻度はまちまちで、速報値と確定値が異なったり、各ストア間で統一されたフォーマットもないため、出版社の担当者がエクセルで手入力している事例も多く聞かれる。メディアドゥのプロダクトマネジメント室プロダクトマネージャーの榊原輝雄氏は「著作者への報告、支払いにかかる業務が肥大化している状況」と指摘する。
また、昨今の電子市場と出版社の感覚として「マンガ主体の出版社はデジタル黎明期を乗り越えているので、手入力でやろうが、何をやればよいかノウハウを蓄えています。文字主体の出版社はこれまでデジタルの販売数が比較的少なかったので、今後増えてきたらどうすればよいか不安を抱えている方も多いようです」。
マーケティングへのデータ活用まで想定
パブナビは電子ストアごとに異なるフォーマットでもそのままデータを取り込む。印税計算では単品だけでなく読み放題や、レンタルなどの販売形態にも対応予定。印税率を期間限定で変更することも可能だ。印税支払いでは計算したデータから支払報告書をPDFで作成。
出版社が契約している金融機関のダイレクトバンキング用の全銀フォーマットが出力でき、支払通知や源泉額の算出、支払調書も出力できる。これらすべての過程は紙に出力することなく、オンライン上で完結できる。
実務作業を軽減するだけではない。その先で目指すのは、売上データを活用し効果的な販売施策、マーケティングにつなげることだ。「売上データがデータベース化されて、初めて販売動向がみえるようになります。対応予定の速報データの取り込みでは、月次よりも早いサイクルで販売動向が手に取るようにわかっていくのではないでしょうか。出版社はこれから、データに基づいて一層戦略的な販売計画をたてる時期にきています」(榊原氏)。
導入検討者はすでに30社超
パブナビは電子書籍の販売・印税管理システムを先行してリリースするが、その後は紙書籍の管理についても機能を拡張していく。最初は自社の既存システムと並行して電子書籍の売上管理と印税計算の機能だけをつかうことも可能だ。
これまで秀和システムやジャイブなどが実証実験を経てテスト版の運用を行ったところ、「取り込みから印税計算、支払いの一連のフローがこのシステムでできる」「支払通知書がメール添付できて効率がよい」との好感触を得ている。
来年以降に、データベースを発展させて、外部の分析ツールとのデータ連携も検討。さらに出版社が著者向けサービスとして著者自身が販売動向や印税について閲覧できるところまで機能を拡張していくことも視野に入れる。これはとくに、新参のボーンデジタル(電子専業)出版社が既存出版社と差別化できる点として期待する声が多いという。
現在パブナビ導入を検討している出版社は30社超。利用料は秋口に発表する。月間の電子書籍売上額などの規模に応じた価格設定にする予定だ。
株式会社メディアドゥ
代表者:代表取締役社長CEO 藤田恭嗣
所在地:〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル5F
設立日:1999年4月1日
資本金:58億3300万円(2021年5月現在)