PHP研究所 ベストセラー『道をひらく』 書店別の限定カバーを全国で

2021年8月31日

 PHP研究所は、554万部のベストセラーで、創設者・松下幸之助による『道をひらく』を、数年前から各地域や書店オリジナルのカバーに巻きかえる販促企画を実施しており、各書店では、2~3倍に達する伸長率、また売上上位にランクインするなど、全国書店で多くの実績を残している。

 

30種以上のカバーデザイン

 

 同社は、2013年から14年にかけ、女性層に向けた拡材やリニューアルカバーでプロモーションを仕掛けところ、全国的なヒットとなり、同書の新たな顧客層の開拓に成功した。

 

 その実績を受け、さらなる開拓を図り、翌15年から有隣堂を皮切りに、地域や書店法人限定のオリジナルカバーによる販促企画を開始。その後も拡大し続け、現在では、ナショナルチェーン、地域チェーン含め、多くの書店法人が実施した実績がある。中には2度、3度と繰り返し取り組む法人もあり、これまで同社が制作したオリジナルカバーの種類は30を超えるという。

 

 当企画は最低ロット500部から受けており、実施確定から、およそ2カ月で搬入が可能だ。カバーデザインについては同社に一任するケースもあれば、書店の要望にそって制作するケースもあり、地域の書店では観光名所や特産品のデザインを施す書店も少なくない。

 

 同社第一事業普及本部の河崎亮部長は、「ロングセラーということもあり、基本的に返品はなく、時代を超えた作品に新たなスポットを当てる販促企画として、ご利用いただいている。また読者に本書を通じて郷土愛を再認識していただくきっかけにもなる」と趣旨を語る。

 

通常のカバー

松下幸之助の筆書きを配したカバー(紀伊國屋書店)

地域の鉄道風景を配したカバー(三洋堂書店)

 

フライヤー×地域書店

 

 今回2回目の取り組みとなる、徳島の書店チェーン平惣の八百原勝氏は「正直、カバーを変えるだけでここまで売り伸ばせるとは思っていなかった。ご当地ものを出版社が作ってくれることは本当にありがたい。この企画を通じて、書店が考える地域の素晴らしさが伝われば」と企画に参加する意図を話す。

 

 さらに10月中旬から同書店と、広島の書店チェーン・啓文社、またビジネス書の要約サイトを運営するフライヤーの3社はコラボ企画を始動する。両書店はオリジナルカバーを巻いた同書を、互いの店頭で展開したうえで、フライヤーの要約サイトへリンクするQRコードを記載したPOPを付けて展開する予定だ。

 

 フライヤーのプロモーション担当・川上留依氏は、その経緯について、「両書店とも弊社のフェア企画にご協力いただいており、さらにそれぞれがオリジナルカバーの取り組みをしていることをお聞きした。3社が協力し合うことで、新しい読者層の開拓になればと思い、双方に提案した」と語る。

 

目指すは1000万部

 

 河崎部長は「松下幸之助は『この本は1000万部にしなさい』という言葉を遺している。実際に不可能な話ではなく、現実的な数字でもある。今後もこのご当地企画を進め、大ベストセラー『窓際のトットちゃん』(講談社)を超える勢いで、今後も積極的に取り組んでいきたい」と力を込める。