東京都板橋区の地下鉄都営三田線「志村坂上」駅近くに店舗を構える書林朝日書店は、店舗面積14坪と小規模ながら、地域の人々に愛用される存在だ。2019年1月に「IT導入補助金」を活用して光和コンピューターのクラウドレジシステム「KPOS」にリプレイスした。
【本紙増刊B.B.B 9月号掲載】
取次人から書店オーナーに転身
店舗は志村坂上A1出口に直結するビルの1階にある。この出口は取次会社の中央社に行く人も利用する。かつては栗田出版販売もここが最寄りの駅口だった。また、近くには凸版印刷の本社所在地でもある板橋事業所がある。
オーナーである森井裕氏は、以前、栗田出版販売に在籍する取次人だった。栗田時代には子会社の書店に出向している時期が長く、取引先であり、社からも近かった今の店にはよく顔を出し、かつてのオーナーとその家族とも顔なじみだった。
同店は戦前に「朝日書店」として志村坂上で開店したが、5年ほど前に前オーナーが手放し、栗田傘下の書店「書林」の1店舗となった。そして4年前に当時の経営者から声がかかり、森井氏がオーナーとして引き継ぐことになった。
「この店はよく知っていましたし、『書林』は入社して最初に新店設営に参加した書店です」と森井社長は書店のオーナーになるまでの縁を振り返る。取引取次はかつての栗田と大阪屋が統合した楽天ブックスネットワークだ。
POSは森井氏が引き継ぐ前から光和コンピューターのシステムを利用していたが、3年前に現在のレジに入れ替えた。できることや操作方法などは変わらないが「スピード感が上がりました」と手応えを感じている。導入に当たっては光和コンピューターのサポートで経済産業省「IT導入補助金」を活用することで負担を減らすこともできた。
2駅先まで無書店地域
志村坂上の商店街にはかつて4軒の書店があったが、今は同店のみになった。それどころか、地下鉄で両側2駅に書店がないのが現状だ。そのためかなり離れた場所から同店を訪れる人も多いという。
「以前当店の前を通った方が東十条あたりから歩いていらっしゃることもありました。近くに本屋がないことが寂しいようです」と森井社長は話す。
もちろん、同店の客層は圧倒的に近所の住人や近隣企業に勤める人が多い。駅に近いので通勤・通学客や、買い物ついでの主婦や、高齢者などが気軽に立ち寄る。裏には600世帯ほどのマンションがあるため、子ども連れも多く、コミックスと雑誌が売り上げの7割を占める。児童書も一般的な書店の比率より多いのが特徴だ。
高齢者が多いので文庫棚では時代小説を分けて揃えており、他の文庫もお客が探しやすい著者別に陳列している。補充など管理は難しくなるが、小規模ならではの面と「今は一覧表でなくてもシステムで発注できるので」とシステム化による恩恵も大きいという。
お客からの問い合わせや客注も多く、「急ぐと言われれば出勤時に出版社に寄ったり、神田村に行くこともあります。行けばいろいろと情報も入りますから」。
前オーナーの奥さんと娘さんが、今もパートとして在籍しており、マンガに詳しい娘さんがコミックスを担当する。「奥さんからは続けてもらって助かると言われますが、救ったような、救われたような」と森井社長は縁の深さをかみしめている。
書林朝日書店
所在地:〒174-0051東京都板橋区小豆沢2-18-7
電 話:03-3966-5840