日本新聞協会は10月6日、2021年度の新聞技術賞、新聞経営賞の各賞受賞者を発表した。本年度、新聞技術賞には5件、新聞経営賞には6件の応募があり、各1件を決めた。授賞式は、11月17日に岩手県盛岡市で開かれる第74回新聞大会式典の席上で行われる。
新聞技術賞は、中日新聞社の「スマートファクトリー~『見える化』で新聞の未来を拓ひらく~」(代表・名古屋本社技術局印刷技術部部長 松山哲史氏)が受賞した。
同社は、新聞印刷工程の省人化・スキルレス化に向けて、輪転機をはじめとする生産設備の運転データを活用し業務を可視化する「スマートファクトリー」を、愛知県の大府新工場で完成させた。
通信方式が異なる輪転機と周辺設備の直接通信を実現する「ECOリンク」を独自に考案し、工場の情報基盤を整備。運転中の輪転機や発送設備などから得られたビッグデータを活用することで、熟練した技能がなくとも的確・容易に各生産設備の稼働状況や消耗部品を管理できるようにし、新工場を早期に安定稼働させた。
「技術の継承や人員の確保が各社共通の課題となる中、オペレーターの経験や技能に頼らない工場運営を目指す取り組みは画期的かつ独創的で、多くの社が直面する課題への一つの解決策と印刷工場の将来像を示す技術」と高く評価された。
新聞経営賞は、神戸新聞社の「地エネの酒for SDGsプロジェクト」(代表・経営企画局経営企画部専任部長編集委員 辻本一好氏/メディアビジネス局イノベーション・パートナー部 三宅秀幸氏)が受賞した。
同社は、地域での資源循環と日本酒づくりを結び付けるプロジェクトに取り組んだ。食と農の廃棄物を自然エネルギーと有機肥料に再生し、日本酒の醸造・販売までのサイクルを確立することでローカルSDGsビジネスのモデルづくりを目指した。
生ごみなどを発酵させバイオガスを作る牧場、ガス生産の際に発生する「消化液」を有機肥料として酒米を作る生産者、有機栽培米で日本酒を造る蔵元と連携し、事業を推進した。
消費者には「人と自然をつなぐ日本酒」を飲むことで、環境負荷軽減を支援できると訴えた。初回生産分の5700本は、9月の販売開始前に全て卸先が決まった。日本酒のラベル代が神戸新聞社の収入となる。
新聞社が持続可能な地域社会のデザインを考える場を創出することから始め、プロジェクトを先導し、地域ブランドを作り、収入を得る仕組みを築いたことや地元の産品に着目して、循環型社会の実現に取り組んだ先見性は高く評価された。