メディアドゥ コンテンツを取引するNFTマーケットプレイス「FanTop」のサービスを開始

2021年10月13日

マンガ・アニメ世界展開の基盤としても期待

 

 メディアドゥは10月12日、東京都千代田区の本社で報道関係者やIPホルダー向けの説明会を開催し、同日ブロックチェーン技術を基盤とするメディアドゥ開発のNFTマーケットプレイス「FanTop(ファントップ)」(以下、FanTop)のサービスを開始したことと、トーハンと共同で「NFTデジタル特典」付き出版物の販売を始めたことを発表した。

【堀鉄彦】

 


 

説明会で登壇したメディアドゥの藤田恭嗣社長

 

 FanTopは、カナダのダッパーラボ社が開発したブロックチェーン基盤「Flow」を利用したNFTマーケットプレイス。NFT技術を使うことでデジタルコンテンツに希少性や限定性といった価値を創出。収集や鑑賞、譲渡や売買といったこれまでにないデジタルコンテンツの楽しみ方を提供する。

 

 一般的なNFTマーケットプレイスでNFTを購入する際はイーサリアムなど暗号通貨が必要だが、FanTopは利用者がクレジットカードなどを使い、法定通貨で購入できる点も特徴。暗号通貨の取引になじみのない層にも利用者を広げるため、ユーザーインタフェースにも工夫をこらした。

 

 メディアドゥは、二次流通の際にもIPホルダーに収益還元するなど、NFTの特性を生かした形でマーケットプレイスを運用する。日本の大手コンテンツ流通事業者がNFTマーケットプレイスの運用を始めるのはこれが初めて。メディアドゥは、ファンアイテムのNFTマーケットプレイスとしては世界最大規模であるダッパーラボ社と組み、海外マーケットへの展開でもNFTを活用していく方針だ。

 

トーハンと共同でNFT特典付き出版物を発売

 

 メディアドゥは、まず21年3月に資本業務提携を結んだトーハンと共同で「NFTデジタル特典」を、紙の出版物やボックスなどの購入特典として全国の書店で展開する。

 

 購入した紙の出版物やボックスに付いてくるギフトコードをスマートフォンなどで読み取ると、作品に関連するシリアル番号付きの特典コンテンツを入手することができる。入手したコンテンツはマーケットプレイスで譲渡や交換が可能。

 

 年内に予定する二次流通サービス開始後は販売もできる。保有者情報がブロックチェーンで公開されるため、自分と同じようなNFTを持つ人々や友人のコレクションを覗くこともできるという。

 

 二次流通時にも出版社などIPホルダーに利益が還元されるようにできる。将来的には、ユーザージェネレーテッドコンテンツ(UGC=ユーザーが作成するコンテンツ)の流通にも対応する計画だ。

 

 12日に発売された扶桑社発行の『週刊SPA! 10/19・26 合併号 特装版』を皮切りに、14日発売の主婦の友社発行の『岡崎紗絵1st写真集「すがお。」特装版』、11月2日には扶桑社発行の『北川綾巴1st写真集「君の太陽」NFT特装版 デジタルムービー・未公開写真集特典付き』と続く。いずれも、紙の出版物の購買とNFTの発行を連携することで、出版物の付加価値向上、書店の来客増を目指す。

 

 一方、FanTop上では、12日からNFT特典付きの「ボックス」販売も開始した。購入した後、パッケージなどに記載のコードを読み取るとNFTアイテム(種類はランダムに決まる)を入手することができる。

 

 販売が決まっているのは『北斗の拳』漢の死に様シリーズ 南斗六聖拳ボックス(コアミックス)、『銀牙伝説』NFTアートシリーズ(日本文芸社)、「したら領ファンクラブ会員証」(非売品、ファンクラブ加入者に限定配布、コルク)、など5点。すでに13日時点で『北斗の拳』のボックスは完売している。

 

ARやVRの機能を備えたアプリを年末までに投入

 

 メディアドゥは、21年末にFanTopで提供される全てのNFTを展示・鑑賞できる3D閲覧・AR・VR機能を搭載したビューアアプリを提供する予定。

 

 ビューアアプリでは、巨大なデジタルのフィギュアを3D・AR(拡張現実)で閲覧できるほか、好きなもので埋め尽くしたVR(仮想現実)のコレクションルームをアプリ内で複数持つことができる。NFT所有者にしか見られない限定情報を付与することも可能だ。

 

 また、傘下のアニメ・マンガコミュニティ&データベースMyAnimeListと連携。日本マンガ・アニメのNFTデジタルファンアイテムを海外向けにも流通させる計画。MyAnimeListは既にフィギュアなどのアイテム販売をしているが、NFTを組み合わせてより魅力的なサービスにしていく。

 

NFT事業の説明をする溝口敦取締役

 

 具体的なサービスとしては、まずマンガやアニメの名シーンの一コマを、NFTデジタルファンアイテムとして販売する「Manga Fragments」を始める。「我々がこれまで見てきたマンガやアニメーションの記憶や思い入れを呼び起こせるようなNFTを作りたい」(溝口敦取締役)。「Manga Fragments」は、MyAnimeListコミュニティメンバーが中心となった議論から生まれたサービスだという。

 

最大のトランザクション誇るNFT基盤で世界展開

 

 メディアドゥがブロックチェーン基盤として採用するFlowは、非中央集権的のパブリックブロックチェーンのため、発行されたNFTの所有者情報・発行履歴などが削除不能。運営のアルゴリズムなどに工夫がこらされているため処理速度が速く、既存のマーケットプレイスにおける課題のひとつとなっていたトランザクション費用(ブロックチェーンプラットフォーム利用に際してノード参加者=マイナーに支払う利用料)も非常に安い。

 

 ダッパーラボは、Flowを使ってNFTブームの火付け役となった「NBAトップショット」をNBA(全米バスケットボール協会)とともに運営中。最近NBAのほかNFL(全米フットボール協会)と、Googleとの提携も発表している。NFTの世界では最も注目されている企業のひとつだ。

 

 Flowで運用されるプラットフォームは世界で200万人の利用者を抱え、Flow上での2021年のNFT二次流通取引数は、あらゆるブロックチェーンの中で最も多い1000万トランザクション以上を記録しているという。メディアドゥは、Flowのプラットフォームを使ってアニメなど国産コンテンツNFT化を進め、その世界展開も加速させていく方針だ。

 

 ダッパーラボは発表に合わせて「FanTopがFlow上でリリースされることは、デジタル時代におけるアニメファンアイテムの革命。FanTopが、NFTを活用した新しいデジタルアイテムの所有を通じて、新しいファンを取り込み、彼らを大いに喜ばせる事を期待している」とのコメントを寄せている。

 

NFT基盤のOEM提供も

 

 メディアドゥはファンアイテムを販売時のプラットフォーム利用料や、ライセンシーとしてNFTを作成する時の販売収益などでFanTopを運営する。また、希望する事業者には、FanTopの基盤をOEM提供し、専用のマーケットプレイスを構築や運営を請け負う。

 

FanTopのURLはfhttps://fantop.jp/