毎日新聞社など主催 柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」 東京で10月26日開幕

2021年10月21日

 民芸運動を率いた思想家・柳宗悦(やなぎ・むねよし、1889~1961年)の没後60年を記念する展覧会「民藝(みんげい)の100年」(毎日新聞社など主催)が10月26日から、東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれる。各地の風土から生まれ、生活に根ざした民芸品には、美術品に負けない美しさがあると唱え、物質的な豊かさだけでなく、より良い生活とは何かを追求した民芸運動の歩みをたどるとともに、持続可能な社会と暮らしが問われている現代に通じる運動の意義を見つめ直す。

 

≪羽広鉄瓶≫山形県 1934年頃 日本民藝館蔵

 

 民芸は「民衆的工芸」の略で、約100年前に柳や陶芸家の濱田庄司、河井寬次郎らが作り出した新しい美の概念を意味する言葉。

 

 柳らは若くして西洋の情報に触れ、「モダン」に目覚めた世代でありながら、それまで美の対象として顧みられることのなかった民芸品に、用に則した美が宿ることを見いだし、工芸を通して生活と社会を美の観点から変革する民芸運動を推し進めた。

 

 展覧会では、柳らが国内外で収集した陶磁器、染織、木工、みの、かご、ざるなどの暮らしの道具類、大津絵や泥絵といった土産物や奉納品として大量に作られた「民画」のほか、当時の出版物、写真、映像などの資料を展示する。

 

≪スリップウェア鶏文鉢≫イギリス 18世紀後半 日本民藝館蔵

 

 450点を超える作品と資料を通して、関東大震災、鉄道網の発達と観光ブーム、戦後の高度経済成長などの出来事や社会の動きを背景に変化していった民芸運動の歴史をたどる。

 

 特に今回は、美術館、出版、流通という三つの柱を活用した民芸運動のモダンなメディア戦略と、それぞれの地方の人・モノ・情報をつないで協働したローカルなネットワークに焦点を当てる。

 

 美しいモノの収集にとどまらず、新作民芸の生産から流通までの仕組み作り、農村地方の生活改善といった問題提起、衣食住の提案、景観保存にまで広がった民芸運動の現代における可能性を考える。

 

≪ににぐりネクタイ≫デザイン指導:吉田璋也 鳥取県 1931年デザイン 鳥取民藝美術館蔵 撮影:白岡晃

 

22日からウェブで特別コンテンツ公開

 

 開催に先がけ、22日からは公式ウェブサイト(https://mingei100.jp)で特別コンテンツ「はじめまして、民藝」を公開する。女優・モデルの菊池亜希子さんが、東京や鳥取で民芸を取り巻くさまざまな分野の人々と対談し、独自の視点で民芸の魅力を読み解く。