河出書房新社から11月11日に発売された人気ボカロP・カンザキイオリさんの最新作『親愛なるあなたへ』が好調な出足を記録している。発売後、各書店文芸書ランキングを席巻し、サイン本の完売店が続出するなど注目が集まった。大手書店のPOSデータによると、紀伊國屋書店全店の小説第1位(11月8日~11月14日)、TSUTAYA国内小説第1位(11月9日~11月16日、TBN文芸書/国内小説)にランクインした。
カンザキさんはボカロP(音声合成ソフトVOCALOIDで楽曲を制作する音楽家)としてカリスマ的人気を誇っているアーティスト。2020年にヒット曲「あの夏が飽和する。」を元にした同名小説で作家デビュー。20年9月に河出書房新社から刊行した『あの夏が飽和する。』は累計11万部突破のベストセラーとなった。
新作の『親愛なるあなたへ』も前作に近しい推移で売り上げを伸ばしているという。担当編集者の中村孝志氏は「カンザキさんご自身、前作の経験を経て、満を持して執筆された意欲作であり、好きな人(もの)に真正面から向き合うことの苦しさ、そして大切さをつづった傑作です。あらゆる世代の胸に響く、普遍的なテーマと思いますので、多くの方に読んで、そして関連楽曲を聴いて、楽しんでいただければ幸いです」とコメントを寄せた。
小説×音楽 TwitterやYouTubeで関心高まる
『親愛なるあなたへ』発売告知直後から、Twitterや同書関連楽曲「爆弾/初音ミク」「不器用な男/カンザキイオリ」のYouTubeコメント欄は多くのファンで賑わった。前作『あの夏が飽和する。』から14カ月後となる新作小説の発売に「待ちきれない」といった声がファンから多く寄せられ、期待が高まっていた。
発売当日の11月11日には、各書店の文芸書ランキングで1位を獲得。「紀伊國屋書店全店 単行本」「TSUTAYA 書籍/文芸書」のほか、「くまざわ書店全店 文芸」「未来屋書店 文芸・文庫」「三省堂書店 文学・ノンフィクション」「トーハンTONETS i 書籍/文芸」で首位となり、週間ランキングでも上位にランクインしている。
異例のサイン本1000冊超、話題沸騰で完売店続出
河出書房新社は刊行に際し、文芸書としては異例となる1000冊超のサイン本を作成。全都道府県77書店で販売した。サインを終えたカンザキさんによる告知ツイートでの反響も大きかった。11月9日に河出書房新社のオウンドメディア「Web河出」で取扱書店の告知を行った際には、サーバーにアクセスが集中し、一時閲覧がしづらくなる事態となった。
実際にサイン本が店頭に並ぶと「紀伊國屋書店新宿本店」を皮切りに「TSUTAYAレイクタウン」「紀伊國屋書店さいたま新都心店」「MARUZEN名古屋本店」「紀伊國屋書店梅田本店」「丸善博多店」「ジュンク堂書店鹿児島店」など、全国各地で完売店が続出した。なお、サイン本は各書店の在庫が無くなり次第終了となる。
また、『親愛なるあなたへ』の物語と密接に絡むセルフボーカル曲「不器用な男」の動画は223万回再生、物語のキーとなるボカロ曲「爆弾」は48万回再生を突破。同書の購入特典で、書き下ろしテーマソングの「偶像」も好評を得ている。特典の配信期間は2022年2月28日まで。
11月19日にはカンザキさんによる「爆弾」セルフボーカル版がリリースされる。ミュージックビデオは「明け方の若者たち」の劇場公開を控える映画監督・松本花奈氏による実写ドラマ仕立てとなっている。