文化通信社「ふるさと新聞アワード」表彰式を開催 地域紙の優れた記事を顕彰

2021年12月1日

 文化通信社は11月26日、地域紙が発信する記事を顕彰する第1回「ふるさと新聞アワード」の表彰式を東京・千代田区のプレスセンタービルで開催した。グランプリに選ばれた苫小牧民報をはじめ、「もの」「こと」「ひと」の3部門の最優秀賞、優秀賞を受賞した地域紙の代表者らが出席し、文化通信社・山口健社長から記念の盾や賞状などが贈られた。

 

第1回「ふるさと新聞アワード」の表彰式に出席した受賞者と外部審査員ら

 

 文化通信社は創刊75周年を迎えた今年、全国の地域紙が閲覧できる「ふるさと新聞ライブラリー」(東京・文京区、文化通信社内)と日本地域紙協議会の協力で、「ふるさと新聞アワード」を創設した。

 

 対象の記事は、直近1年間に本紙またはデジタル版に掲載された記事。今回は全国の20紙から、約200本の記事が寄せられた。それらの記事を、文化通信社内で3部門各12本を第一次選定した。

 

 それを地域にゆかりのある外部審査員が最終審査。食べチョク代表の秋元里奈氏、歴史家・作家の加来耕三氏、放送作家・脚本家の小山薫堂氏、中川政七商店会長の中川政七氏、温泉研究家の山崎まゆみ氏の5氏が、各記事を評価。グランプリ1件、最優秀賞3件、優秀賞9件が決まった。

 

「地域紙の記事に光りが当たるきっかけに」

 

 表彰式の冒頭、山口社長があいさつ。本を贈る習慣を提案する「ギフトブック・キャンペーン」や、子どもが本と出会う機会を創出する「こどものための100冊キャンペーン」のほか、今年7月には創業75周年記念シンポジウムを開催するなど、文字・活字文化推進のための事業を展開していることを紹介。

 

 そのうえで、「(当社内にある)ふるさと新聞ライブラリーに届く地域紙を読むたびに、彼らの記事にもっと光が当たるようなお手伝いができないかと考えていた。今回ご協力いただいた外部審査員の皆さんも含めて、今後もこのアワードを続けていきたい」と語った。

 

 表彰式では「もの」部門、「こと」部門、「ひと」部門の順に、それぞれ優秀賞、最優秀賞を紹介。出席した各氏の代表らに賞状と副賞が贈られた。

 

 最も高い評価を集めたグランプリには、苫小牧民報の記事「アイヌの丸木舟 55年ぶり発見 弁天の海岸に2隻」が選ばれた。記事を書いた苫小牧民報社の半澤孝平記者は贈賞後にあいさつし、第3社会面に毎日掲載している「落とし物」コーナーに「丸木舟」とあるのを見つけ、取材を続けた経緯などを説明。

 

グランプリを受賞した苫小牧民報の半澤記者(右)と文化通信社・山口社長

 

 そのうえで、「私たちの活動を顕彰する賞が創設されたことをうれしく思う。このアワードが、全国各地で暮らしを見つめる地域紙の存在意義の気づきにつながり、関係者に勇気と活力を与えるものに発展されることを願っている」と喜びを語った。

 

「地域紙の価値、存在を知らしめることが重要」

 

 外部審査員の小山氏、中川氏は自身も高く評価した記事などについて、ビデオメッセージであいさつした。小山氏は「地域紙の記事を読んで、記者の好奇心や疑問から始まる取材が、今の時代に改めて必要だと感じた。足でかせぎ、熱量、愛のある記事を取材し、発信することにこそ価値がある」と強調。「来年からもこの取り組みがより広がってほしい」と話した。

 

 中川氏も「地域紙の記事を読むと、地元を見る目の解像度、感度が大手紙などとは違っておもしろいことが分かった。また、地域紙同士で協力して被災地支援をする記事(あやべ市民新聞)にも、大きな可能性を感じた」とコメントを寄せた。

 

 表彰式に出席した外部審査員もあいさつ。日本最大の産地通販サイト「食べチョク」を運営する秋元氏は、「(審査を通して)地域紙の良さを改めて感じた。地域密着だからこそ聞ける声、一人ひとりのストーリーに寄り添った記事に、地域紙ならではの価値を感じることができた」と語った。

 

秋元里奈氏

 

 山崎氏も「今回、審査をして地域に密着した新聞の価値に、改めて気がつくことができた。地域紙にはほっこりしたり、胸が熱くなる記事も多くあった。それは彼らの記事の目線が『優しい』『あたたかい』からだろう」とエールを送った。

 

山崎まゆみ氏

 

 加来氏は「私自身、地域に密着した新聞が最後まで残ると思っているが、残念なのは地域紙の価値が世の中に評価されていないこと。地域紙という媒体の存在や活躍が、まだまだ知られていない。その価値を認め、知らしめるためにも今回のアワード創設には意義がある」と評価した。

 

加来耕三氏

 

 最後に、日本地域紙協議会・新保力会長(市民タイムス会長)が閉会のあいさつ。地域紙の歴史などを語るとともに、「私は『地域紙がある町』という言葉が好き。地元の新聞があることで地域を元気にしたり、応援したり、豊かにすると信じている。このアワードが地域紙の新聞づくりの励みになることを願っている」との思いを語った。

 

新保力会長

 

〈第1回ふるさと新聞アワード受賞紙〉
●グランプリ=苫小牧民報

 

●「もの」部門
 ▽最優秀賞=熊野新聞

 ▽優秀賞=胆江日日新聞、夕刊三重、南信州新聞

 

●「こと」部門
 ▽最優秀賞=熊野新聞

 ▽優秀賞=あやべ市民新聞、丹波新聞、島根日日新聞

 

●「ひと」部門
 ▽最優秀賞=夕刊いわき民報

 ▽優秀賞=丹波新聞、熊野新聞、須坂新聞

 

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