愛知県豊橋市を中心に店舗展開する豊川堂は、創業から450年ともいう地元きっての老舗だが、2017年に名古屋市中心部にオープンした「ささしまグローバルゲート」に本と雑貨、飲食の複合店を出店するなど、新業態の展開にも力を入れている。
【本紙増刊B.B.B12月号掲載】
同社は豊橋駅前の本店(80坪)のほか、豊橋市内にカルミア店(120坪)、アピタ向山店(65坪)、田原市にセントファーレ田原店(150坪)、そして豊川市のアイレクステラス内に本と雑貨とカフェの新業態nido by Honey Bee Project(120坪)と、ささしまグローバルゲート店(200坪)を展開する。
同社がこの地で「髙須屋」を屋号として商売を始めたのが450年前。その後、様々な業態を経て、書店としては明治になり学制が始まった直後の1874年、教科書の発行から事業をスタート。このため今も教科書販売など学校向けの外商力が強く、地元関連の出版事業も続けている。
女性客で賑わう新業態店舗nido
nidoやささしまグローバルゲート店など新業態の展開は、2016年から社長を務める髙須大輔氏が中心になって進めてきた。
2015年にオープンしたnidoは、書籍・雑誌と雑貨の販売に、「循環」をテーマとした自社直営のカフェを併設。地元東三河の食材を使ったスイーツなどが人気で、平日日中は子どもが幼稚園や学校に行っている母親たちなど女性客や年配の客が多く来店し、週末はファミリー層で賑わっている。
ささしまグローバルゲート店は、名古屋駅近くの再開発エリアというオフィスや大学が近い、同社としては初の都市型店舗。店内の70坪を占めるカフェの運営は他の企業に業務委託し、ウエディングや忘年会などパーティーができるスペースとして展開。こちらもコロナ前はパーティー需要が多く、土日はほぼ貸切状態という人気店舗だった。
しかし、コロナ禍の影響でパーティー需要は激減。nidoも本や雑貨の売り上げは伸びたが、カフェは前年比60%という時もあった。ただ、ここにきて感染の勢いが落ち着く中で客足は戻りつつあるという。
この両店では、複合商材に対応するため、POSシステムは光和コンピューターの「KPOS(15インチ)」を導入。バックオフィスシステムは同社の「BookAnswerⅣ」を利用している。
今後の新業態店舗については、nidoを出店して以来、デベロッパーからの出店要請が多くなったというが、雑貨は買い取り条件がほとんどで、お客のニーズと在庫のバランスなど難しい点も多い。
このため髙須社長は「環境にフィットしていくことが大切です。今後も身の丈に合わせてやっていきます」と慎重に進めていく考えだ。
外商もコロナ禍の影響大
一方、外商は学校外商部員10人体制で、東三河地区の小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校など約200校に教科書や教材などを納入している。
売上規模は店売より大きいという外商部門だが、こちらもコロナ禍の影響は大きかった。昨年春から休校が続いたことで、教材の販売が難しかったのに加え、学力検査、能力テストなどがなくなり、夏休みが短くなったことで課題もほとんどなくなったからだ。
「コロナが収まるのを待っていても解決はできない」と考える髙須社長は、提案型営業への切り替えを進めている。
「今までは時期に合わせて既存の教材を販売していましたが、その商品がなぜ必要なのか、この教材はこういう使い方をすると効果的などと、それぞれの学校に合う特徴のある商品を活用方法まで含めて提案しなければなりません」と話す。
また、コロナ禍で「GIGAスクール構想」が加速するなか、デジタルへの対応も重要とみる。「教育のデジタル化はどこまで進めるべきか議論もありますし、紙の教科書は残ると思いますが、タブレットを導入する学校から教材を提案してほしいという要請も来ており、デジタルに対応することで価値を提供していく必要があります」という考えだ。
出版事業継続も大切
書店として店売と外商は同社の大きな柱だが、髙須社長は「地元の出版は続けて行きたい」と話す。
教科書の発行からスタートした同社の刊行物だが、いまは東三河の郷土本を中心に、多い年で5~6点を刊行する。地元の人が「豊川堂から出したい」と原稿を持ち込むことも多く、「出版事業でも地域の皆さんと交流してきました。行政の公認をいただいたりもしてきたこの事業にプライドを持っているので、できることは全力でやっていきたいと思います」と髙須社長は考えている。
豊川堂(豊橋市)
株式会社豊川堂代表者:髙須大輔
所在地:〒440-0804愛知県豊橋市呉服町40
創 業:1874年
資本金:1000万円
従業員:89名