スーパーなどで利用が進んでいるセルフレジの、書店への導入が始まっている。これまで店員が行っていた精算の作業を顧客が行うことで、店員の数や負担を減らすといった効率化や、これまで以上に顧客との会話が生まれるという効果もあるという。さらにコロナ禍によって非接触のニーズが高まるなかで、セルフレジ導入の動きが加速しつつある。本特集では書店へのセルフレジ提供を始めているシステム会社の光和コンピューター、メトロコンピューターサービス、文献社について紹介する。
「フルセルフ型」と「セミセルフ型」
セルフレジは、従来、顧客と店員が対面で処理していたレジの決済作業を、顧客自身が行うシステム。店員が商品のスキャニングなどを行い、決済のみを顧客が行うスーパーマーケットなどで多く見られる「セミセルフ型」と、スキャニングから決済まですべてを顧客が行う「フルセルフ型」がある。
「フルセルフ型」の場合は複数台のレジを少数の店員が管理できるため、人件費の削減には大きな効果を発揮する。CD・DVD のレンタルではこのタイプのレジの導入が以前から進められてきた。
一方、購入商品数が多いスーパーマーケットなどでは、スキャニングを慣れた従業員が行う「セミセルフ型」の方が処理スピードが速いといったメリットがある。
さらに、書店でこのタイプの導入を進めているくまざわ書店では、決済時の店員と顧客との距離が縮まり、作業をしながら会話が生まれることで、接客の質が向上するという効果を実感しているという。
導入先行した三洋堂HD
書店業界では、レンタル事業を手がけてきたTSUTAYA などで導入が先行。中でも東海地域を中心に三洋堂書店76 店舗を展開する三洋堂ホールディングスは、いち早く2018年から店舗へのセルフレジ導入を開始。人件費の削減などに効果を発揮しているという。
同社が導入しているセルフレジは、商品のスキャニングから決済まで、すべてを顧客が操作することでカウンターの人員を減らすことが可能な「フルセルフ型」。レンタル・物販のすべてを統合型セルフレジで決済が可能だ。
同社はもともとPOS システムなどを自社開発しており、セルフレジの開発も自社でまずレンタル専用レジ、そして統合型セルフレジを開発した。
店舗への導入に当たっては、カウンターの有人レジを1 ~ 2 台にし、セルフレジを客数に応じて3~ 6 台導入。セルフレジは店員が操作する有人レジに比べて会計にかかる時間が長くなるため台数は増やすが、カウンターの人員を減らし売場作業を兼任するようにしている。
当初、セルフ化でロスの増加も懸念されたが、セルフレジ導入とロス率の動きに関係性は見られないという。
大手取次、大手書店も対応開始
そして、コロナ禍で店頭での接客に支障が生じたことで、書店でのセルフレジ導入のニーズが高まっている。
大手取次のトーハンも書店向けセルフレジ「POS V セルフ」を開発し提供を開始した。
メトロコンピュータサービスと共同開発した「POS Vセルフ」は、各種キャッシュレス決済やポイントサービスにも対応するほか、図書カード読み取り端末を標準装備するなど、書店での利用を想定したシステムだ。同社はかねてセルフレジの開発を進めてきたが、コロナ禍で非接触決済へのニーズが高まったこともあり開発を加速したという。
大手書店の三省堂書店も今年7月にFC・売店を除く全17 店舗でセルフレジを稼働し、コロナの影響による消費行動の変化をに対応し、セルフレジによる非接触・非対面の運用を開始した。
基幹店舗の神保町本店ではこれまで1 階の集合レジで有人レジ12 台を稼働していたが、このうち5 台をセルフレジにして有人レジ7 台とともに運用を始めた。
セルフレジでは、顧客が書籍のバーコードをスキャンして支払いをすることで会計を完了することができる。レジ待ちストレスが軽減されるとともに、会計にかかる店員の業務負担を軽減し業務の効率化を図ることで、リアル書店の業務である棚づくりや問い合わせ対応に時間を再配分する考えだ。
機器やソフトウェアはこれまで同書店にPOSレジを導入してきた日本ポイントソフトと共同開発し、既存レジへの周辺機器の追加とソフトウェア改修によりセルフレジとして利用することを可能にした。
【光和コンピューター 昨年夏にセルフレジをリリース くまざわ書店など3 店舗で導入実績】
【文献社 利用シーンに最適なセルフレジを提供 接客業務や商品管理を強力支援】