新潟日報会の秋季総会は11月24日、新潟市内のホテルで開かれ、会員の新聞販売店(NIC)や新潟日報社の役員らが出席した。来賓あいさつで同社の小田敏三社長は「来年は創刊80周年を迎える。コロナ禍でデジタルへの取り組みも急ぐが、紙の価値を高める手段としてデジタルを使っていく」と語ったうえで、「部数にこだわることが自分たちの基礎体力を維持することになる。厳しい環境だが、部数にこだわる原点に戻ろう。無購読者層こそ一番の強敵だ。しっかりとした基礎体力がなければ、そこに踏み込んでいけない」と求めた。
「部数にこだわる」取り組み強化
総会の冒頭、新潟日報会・木戸信輔会長(NIC加茂)があいさつ。自店で取り組む、地元密着の活動を紹介する動画を流し、出席した会員に積極的な活動を訴えた(要旨は別項)。
表彰式では、NIC憲章実践賞、おとなプラス5周年増紙賞、年間実配増紙賞、特別増紙賞、電子版奨励賞、新潟日報サービスセンター賞、特選市場賞、『新潟 戦争の記憶』特別賞を受賞した各販売店を表彰。彼らがどのような取り組みをして成果を上げたのか、具体的な活動内容を記した資料も、他の店が参考にできるよう配られた。また、「Go To Eat」キャンペーンの販売に対する感謝状も、新潟日報会に贈られた。
「おとなプラス」5周年で増紙達成
新潟日報社・小田社長のあいさつ(要旨は別項)に続き、吉倉久一朗取締役読者担当もあいさつ。NIC憲章実践賞を受賞した販売店の取り組みを高く評価するとともに、夕刊を全面的に刷新した「おとなプラス」の創刊5周年記念キャンペーンの成果に触れ、「ほぼ全店で前月比プラスの2238部プラスという大きな数字を残していただいた」と語り、NICの力に感謝した。
そのうえで、「各賞を受賞した店の活動内容を記した資料を読むと、共通点がある。それは自分の店なりの動きを作っていること。新潟日報会の地区会、支部が思うように活動できない状況でも、個々の店が独自に工夫して動いている。それらをぜひ参考にしてほしい」と呼びかけた。
さらに、部数動向にも触れ、「40万部を割っているが、自店の目標に向けて動き出しているNICの数字は回復傾向にある。全店が部数にこだわり、マイナス傾向の改善に向けて取り組んでいただきたい。減紙の縮小はNICの皆さんの力だったら可能だ。経営を支えるのは部数だと、その認識をいま一度持っていただきたい」と強調した。
石垣裕執行役員読者局長もあいさつ。「今、コロナ禍だからこそ読まれる新潟日報をつくっている。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年春以降、ネットやフリーダイヤルから自発的な購読申し込みも増えている。新潟日報に信頼を寄せていただいている証拠だ」とし、「そういった追い風を強みにしていこう」と求めた。
また、「ポイントは読者の声や本音に応える紙面づくり。それにより、読者満足度を高め、購読中止の防止に努めたい。読まれる紙面、共感される紙面づくりを続けるので、読者に最も近いNICの皆さんにもぜひ、彼らからの声を本社に届けてほしい」と改めてお願いした。
販売手法についても、「コロナ禍もあって、テレフォンマーケティング、ポスティングなどを続けているが、やはり最後は訪問、対面販売ではないかと実感している」と語り、「当たり前だが、入りを増やして止めを減らすことに尽きる。頭の中でそれを、最優先に考えるようにしていただきたい。今回、表彰された販売店の活動内容を読むと、本当に参考になるだろう。表彰は、そのヒントを参考にしてもらいたいためでもある。各社のチャレンジを応援したい」と期待した。
新潟日報社・小田社長あいさつ要旨
最近は「コロナ禍だから」と、それを言い訳にする場合があるが、コロナ禍だからこそ必要とされる、楽しめる、共感を得られる新潟日報をつくるチャンスでもあると呼びかけている。
その大きな取り組みのひとつが、2年前にスタートした企画「未来のチカラ」だ。以前は「新聞力」と言っていたが、いまは「新聞社力」の時代。新聞社力とは販売、編集、広告が垣根を超えて、一緒に取り組むということ。
それを示すのが「未来のチカラ」で、新潟県内のエリアを一定期間、紙面で集中的に取り上げたり、イベントを開催したりして、掘り下げて発信する地域の未来を住民と一緒に考えるプロジェクトだ。各地域を巡り、3年間で全県を網羅する予定で、現在は佐渡で展開中。
また、コロナ禍で打撃を受けた音楽産業の支援のため「にいがた希望の音魂」というプロジェクトも立ち上げたのも、その一環だ。
今は新聞を読むきっかけづくりも仕事の一つ。その読者に最も近いところで働いているのが、新聞販売店の皆さん。読者に読み続けてもらうためには紙面の力が必要で、それは編集、発行本社の仕事だ。
来年は創刊80周年を迎える。11月1日が創刊記念日だが、今年の永年勤続表彰で社員があいさつし、「紙のほかにも、もう1本読者とつながる網を編みたい。それにはデジタルに親しむ若手の声を、どれだけ吸い上げるかが問われている。このデジタルという網を確かなものにしたとき、新潟日報は県民により近い存在になるだろう」と語っていた。
私たちの世代は紙の一本足打法だったが、コロナ禍でさらにデジタル化を急がなければならないと、背中を押された感じがした。私たちが持つ宅配網、取材力、営業力を三位一体で組み合わせることで、確かなものへと積み重ねていけるよう頑張っている。
新潟日報の基本、スタンスは「紙の価値を高める手段としてデジタルを使う」で、これは変えない。コアな読者である高齢者を置き去りにしたデジタル推進はしないことを、肝に銘じて取り組む。一方で、将来の読者のことも合わせて意識していく。
デジタルの対応はできるだけ迅速に進める。紙の減少は止まらないが、そのスピードをできる限り緩やかにする努力が必要だ。シェア率も大事だが、部数こそ力、部数にこだわることが自分たちの基礎体力を維持することになる。厳しい環境だが、部数にこだわる原点に戻ろう。無購読者層こそ一番の強敵だ。しっかりとした基礎体力がなければ、そこに踏み込んでいけない。
日本全国で災害が頻発し、激甚化している。先日あった岩手県盛岡市での新聞大会でも、「配達や取材など、どんな現場でも命を守ることが最優先」ということが確認された。新潟は平野部でも大雪が降る。皆さんも、まずは命を守る行動を心がけてほしい。
新潟日報会・木戸会長あいさつ要旨
(地産地消をサポートする自店の取り組みを紹介する動画を流して)地元では「地域には良いものがたくさんある」「商品に自信があるが知られていない」という声をよく聞く。地域をよく知っている私たち新聞販売店が、流通のかけ橋になりたい。
新聞折込で告知し、電話やFAXで注文を受けている。それを私たちが自宅に届ける。地元で、住みやすい暮らしをサポートする。新聞配達から総合配達へと進化を目指している。
地元農家から頼まれ、タケノコや枝豆などを売ることから始めた。取り扱い商品も増え、そうめんや舌ブラシ、割烹料理店の惣菜なども販売してきた。
こういったことを繰り返していくと、まずスタッフが喜ぶ。チラシのデザインから販売方法まで、彼らも考え、テンションが上がる。それが読者の皆さんにも伝わる。相乗効果が出てきている。コロナ禍でテンションが上がらない雰囲気の中でも、みんなでワイワイやっている。
私たちの取り組みは一例だが、皆さんも何かテンションが上がるような試みに、挑戦してみてはどうだろうか。これまで取り組んできた私のノウハウも、ぜひ提供したい。お客さまが喜んでもらえることを、私たちも続けていきたい。