新型コロナの影響続く デジタル対応、新規事業の取り組み強化
2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大は、21年に入ってもその影響は大きかった。特に1月から8月までは、全国各地で「緊急事態宣言」が出され、東京都ではほとんどの日が、その対象期間と言える状況だった。
その中で、新型コロナという未知のウイルスに対して、情報を正確に、すばやく届ける新聞メディアへの信頼や期待が、一層高まったのは内外の調査などでも示されている。一方、新聞経営は販売、広告、事業部門を中心に厳しさが続いた。
コロナ禍で、これまで新聞経営を支えてきた販売、広告収入などが減少する中、新聞各社がデジタル対応、新規事業の取り組みを模索、強化した1年と言えるだろう。11月に盛岡市で開かれた新聞大会でも、既存分野におけるデジタル活用、新たなビジネスの創出や展開が紹介された。
新型コロナの拡大をきっかけにこの1年、水面下で新たな動きを進めてきた新聞社もあるようだ。もうコロナ前には戻らないという声は多い。アフターコロナ、ウィズコロナの中で、22年にどのような新しいチャレンジが出てくるか注目だ。
東日本大震災10年 経験と教訓を伝承
2011年3月11日に発生した東日本大震災。1000年に一度とも言われるあの大災害から、10年目となった。甚大な被害を受けた東北地方。そこを発行エリアとする新聞各社は、発災当初から確かな情報を発信し、被災者らにそれを届けている。そして、大震災の経験や教訓を伝承し、今後の防災につなぐ取り組みも続けている。
10年を前に各紙は、復興の10年の検証、被災地やそこで暮らす人々、原発事故後の現状、そして今後の地域社会が目指す方向性など、それぞれのテーマ、切り口で連載、特集紙面を展開した。
東日本大震災後も、日本各地で自然災害が猛威をふるっている。新聞大会では、この10年の節目の年に、災害報道におけるメディアの役割などを議論した。
東京五輪・パラリンピック開催 コロナ禍で異例の対応に
昨年の延期から1年、東京五輪は7月23日に開幕した。新型コロナウイルスの感染拡大が全く収まらず、東京には4回目の緊急事態宣言が発令される中、多くの競技が無観客で行われた。
開催を巡っては、世論も割れ、国内の新聞の論調も二手に分かれたと言えるだろう。その中で始まった大会では、競技会場や選手村に入れる記者数も制限され、定期的な検査など感染予防が求められた。
在京の新聞各社も大会期間中は、感染対策を講じながら、協議結果や選手の活躍を紙面、デジタルで大きく報じた。
五輪に続いて開かれた東京パラリンピックも、報道各社は障害や社会と向き合う選手たちの歩み、選手の技術や戦術などに焦点を当てて報じた。
朝日、毎日、産経、地方紙の購読料改定続く
20年に続き、新聞の月ぎめ購読料を改定する新聞社が相次いだ。中でも、その動向が注目されていた朝日新聞社、毎日新聞社、産経新聞社が7月、8月に値上げに踏み切った。
朝日新聞社は7月1日から、朝夕刊セットを4400円、統合版を3500円に改定。毎日新聞社も、朝夕刊セットを4300円に、統合版を3400円に改定した。産経新聞社は8月1日から改定した。
朝日新聞社は「新聞製作の合理化、人件費や経費の節減に努めてきたが、販売・広告収入が減る一方、製作コストは高くなっている。新聞業界全体が同じような状況で、全国の多くの新聞社が購読料をすでに見直している。新型コロナウイルス禍の影響もあり、長年の経営努力が限界に達した」と値上げの理由を説明。読者に理解を求めた。
グーグル、ヤフーが新聞社の記事に使用料
インターネットの大手プラットフォーマーが、新聞・通信社が発信するコンテンツに、正当な使用料を払う動きが強まった。米IT大手グーグルは9月、各国で展開する記事配信サービス「ニュースショーケース」を日本でも始めたと発表した。44の新聞・通信社が参画し、グーグルが各社に記事使用料を支払う。グーグルは、報道機関にとっては自社サイトの訪問者増で、広告収入の増加や、新規会員の獲得につながると呼びかけている。
また、ヤフーが運営するインターネットニュース配信サービス「Yahoo!ニュース」は11月、媒体社に従来支払ってきた配信料に加えて、ユーザーによる記事のフィードバックを、媒体各社に支払う配信料へ加味することを開始。ユーザーの課題解決につながる記事の支援を促進する取り組みを始めた。