アスコムは2021年7月から11月にかけ、5カ月連続で売上冊数、実売金額ともに前月を上回り、複数の銘柄が10万部を突破するなど、現在、好調に推移している。「今年の9月末以降、潮目が変わり始めた」という同社の営業局長・丸山敏生取締役と同局販売促進部・池田孝一郎次長に話を聞いた。
9月以降に売上急伸
同社が21年3月に刊行した小澤竹俊氏の『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』が13万部に達し、同年7月に刊行した小林弘幸氏の『結局、自律神経がすべて解決してくれる』、9月に刊行した中野信子氏の『世界の「頭がいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』、さらには20年12月刊行の内野勝行氏による『1日1杯脳のおそうじスープ』など、計4銘柄がそれぞれ10万部を突破し、売り伸ばしに成功している。
「攻め」の姿勢で出稿を増やす
その背景には、地方紙を含め新聞広告への出稿を増やし、さらには10月に3週間、11月から12月にかけ、2週間にわたるJR東日本のドア横交通広告を展開。緊急事態宣言中と比較して出稿を意図的に増やし、「攻め」の姿勢で仕掛けたことも大きく奏功した。
また書店への来店客が戻りつつあるという外的要因に加え、「当社はコロナ特需とは無縁で、新聞広告を掲出しても結果がついてこず、昨年から今年の前半にかけ、歯がゆい思いをしていた」(丸山取締役)という同社にとって、その間に社内体制の見直しを図ったことによる内的要因も大きいという。
特殊拡材で店頭活性化
同社はこれまで、店頭用で流すためのCDプレイヤーの貸し出しや、料理レシピ本大賞で部門賞を受賞した『長生きみそ汁』では、お椀型の立体型拡材を展開するなど、社内で「特殊拡材」と称される店頭活性化の施策に取り組んできたが、その原点に返り、同社は『結局、自律神経が…』において、猫のぬいぐるみを「特殊拡材」として書店に提供したところ、書店からの大きな反響と展開につながった。
丸山取締役は「本を売ることだけが目的ではない。書店をどう活性化させ、魅力的な場所にするか。その売り方までも提案することが当社の得意とするところであり、ミッションだと思っている」と語る。
過去のコンテンツを見直す
一方、見直すきっかけになったのは販売戦略だけではない。緊急事態宣言下で、過去本などの既存のリソースを再度、市場に投入するきっかけにもなったという。
『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』は、もともと『人生の意味が見つかるノート』というタイトルで、女性の高齢層をターゲットにした商材だったが、ターゲット層を30~40代に切り替え、カバーデザイン、内容も大幅にリニューアルした。
池田次長は「他社でもリニューアルはよくあるが、何でもいいというわけではない。過去のコンテンツが、今の時世にあってこそ初めて成立する。現在は若い人でも死を意識せざるえない状況で、そこにマッチしたのでは」と分析する。
「現段階では確かに好調だ。しかしこれが未来永劫続くわけではない。だからこそ、攻めの姿勢で、新しくチャレンジすることを忘れてはいけない。今、その仕込みを進めているので、期待してほしい」と丸山取締役は、新しい施策について力を込める。