4カ月続けて売り上げが100万円を超えた。2017年4月のオープン以来、こんなことはなかった。
昨年9月中旬、『新聞記者、本屋になる』(光文社新書)を出版した。「定年目前58歳、子どもは3歳、書店員経験0からの本屋開業記!」という帯文が効いたのか、発売して間もなく重版が決まった。最初の注文は100冊。恐る恐るだったが、知人、友人らが買い求めてくれたおかげで、追加注文を繰り返した。自分の店だけで260冊以上が旅立っていった。
カウンターで「本を読みました」と声をかけてくれるお客さんが相次いだ。わざわざ買いに来てくれるお客さんもいた。セカンドキャリアの相談を受けたことも。1万円~2万円だった平日の売り上げは3万円、4万円にも達した。9月と12月は本の売り上げだけで100万円を超えた。
メディアも取り上げてくれた。読売新聞書評欄のインタビュー記事「著者来店」に登場したのをはじめ、女性セブン、赤旗などの取材を受けた。10月にはポッドキャスト「ホントのコイズミさん」の収録で小泉今日子さんが店に来てくれた。キョンキョン! 書評の依頼があり、大みそかの京都新聞にも寄稿した。
看護師の妻には「いま、風が吹いている」と話していた。でも、風はいずれ止む。年が明けた1月、売り上げが数千円という日が続いた。「いいことも、あまりよくないことも共有して一緒に考えていけばいい」と言ってくれている妻には伝えていない。
本屋という仕事をいつまで続けるのか。昨年11月、年金をもらえる63歳になった。家族の時間を大切しながら、できるだけ長く続けたい。そのために考えていることがある。「低く、長く、遠く」だ。
閉店時間を17時~18時としているのは晩御飯を家族そろって食べるためだ。続けるためには無理はしない。赤字にならない限り、売り上げ目標は低ければ低い方がいい。そうすれば夜遅くまで店を開けなくても済む。
4年ちょっと前に店を始めたのは遠い出来事で、今の景色は見えていなかった。4年後も本屋を続けていれば、今とは違う景色があるはずで、その景色を見てみたい。
▼第2回(2月17日掲載)「おススメは鰹節」
▼第3回(3月17日掲載)「書いた、走った、飲んだ」
▼第4回(4月14日掲載)「ガラスの下駄」を履いていた
▼第5回(5月12日掲載)サン・ジョルディの日
▼第6回(6月9日掲載:最終回)「いかれた店主」の独り言
1958年山梨県甲府市生まれ。「Readin’Writin’BOOKSTORE」店主兼従業員。東京外国語大学イタリア語学科卒。読売新聞大阪本社、ランナーズ(現アールビーズ)を経て、90年毎日新聞社入社。主にスポーツを取材。論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に2017年3月退社。著書に『新聞記者、本屋になる 』(光文社新書)などがある。
〈店舗情報〉Readin' Writin' BOOK STORE(リーディンライティン ブックストア)
住所:東京都台東区寿2丁目4−7
HP:http://readinwritin.net/
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営業時間:12:00~17:30(火・金17:00、土・日18:00)/定休日は月曜日