同文舘出版は創業125年を記念して、このほど渋沢栄一著『青淵百話 乾・坤』(全2巻)と同縮刷版の3冊を電子版として復刻した。価格は13万2000円、大学・公共図書館、企業図書館などの電子図書館向けに販売する。
『デジタル復刻 青淵百話』は各1000ページに及ぶ『青淵百話』2巻とこれを1冊にまとめ総ルビを付した縮刷版をPDFファイルにし、検索できるようにテキストデータを張り込み、目次しおり機能と目次リンクを付した。印刷とダウンロードは不可。販売にあたっては分売不可、同時1アクセスとしている。
同書は1912年(明45)に刊行され、同社には同7月刊の第3版と、1913年(大2)刊の縮刷版初版だけが資料として残っていた。これを冊子のままスキャニングして作成したという。
同書は現在、新刊としては入手が困難で、大学図書館での蔵書は50館程度。ただ、多くは閉架での所蔵だという。デジタル化は国立国会図書館が行っているものの、市販はされていない。
販売は電子図書館向けということで、1月から紀伊國屋書店と丸善雄松堂が大学図書館などに向けて営業を開始。すでに成約もあるという。
同社は1896年(明29)に創業。創業者の森山章之丞氏は渋沢氏と親交があったことから、当時同社に在籍した井口正之氏が渋沢邸に1年ほど日参し、口実筆記で原稿を作成し、渋沢氏が加筆修正したという。渋沢氏から直接話を聞いて書かれたものは同書以外にないといわれる。
同社代表取締役社長の中島治久氏は同書に収録した「デジタル復刻にあたって」のなかで、「デジタル復刻によって渋沢栄一研究がさらに発展し、現代にも通用する教えを多くの方が学ばれることを願ってやまみません」とコメント。
また、同専務の中島豊彦氏は「当社には明治大正期の大型企画が多くあるので、この企画がうまくいったら、今後も復刻を検討していきたい」と話している。