日本出版販売(日販)と経済産業省の中国経済産業局(広島市)は2月10日から、書店で本とギフト商品をセットにして購入し、親しい人などに贈ろうという企画「プレミアムな読書をプレゼントに=プレ読」を新たに始めた。中国地方の地元企業が、読書時間を豊かにするための商品を開発。書店でそれを本とともに展開し、ギフト需要を創出する。書店チェーンの垣根を越えて、広島県(一部岡山県)の書店20店舗で展開する。【増田朋】
今回の書店で売る商品を開発するプロジェクトは、コロナ禍にある書店市場で、新たな企画・商品づくりに挑戦することで、書店業界で新たなビジネスモデルを構築。継続的に新事業が生まれる環境が醸成されることを目的にスタートした。
中国経済産業局の伊東直人氏(産業部経営支援課新事業支援係長)によると、「経産省では、製品開発や技術改革など、自社や業界以外の知識や技術を取り込むオープンイノベーションに取り組んでおり、今回もその実証モデルの位置づけ」という。出版・書店業界を対象にしたのは、「まず私が本が大好きだったのが大きい。地元の広島でも書店閉店が相次ぐなど、経産省としても何らかの取り組みができないか」と考え、日販広島支店に声をかけた。
2020年秋ごろから、4つの書店企業や地域の中小企業、ベンチャー企業などが業界の枠を越えて話し合いを重ねた。コピーライターで湘南ストーリーブランディングの川上徹也代表ら業界外からの人材も加わった。川上氏は「最初は本当にゼロからのスタートだった。リアルやオンラインでの話し合いを重ねるうちに、みんなが積極的になり、徐々に方向性や形が決まっていった」と振り返る。
日販広島支店は、地元の参加企業との連携のもと書店で売るための商品開発に携わったほか、プロジェクト全体の進行管理に尽力してきた。
書店の客単価向上も狙う
その中で決まったのが「プレ読」だ。コロナ禍で人と会えない時間が続く中、「大切な人に本と素敵な読書時間を贈ってもらいたい」というアイデアから始まったという。ギフト需要という新規事業を創出することで、書店での客単価向上も狙いのひとつだ。
書店では、「読書時間を豊かにするためのギフト商品」と、書店員などが推薦する「大切な人に贈ってほしい本」40冊を併せて販売する。
ギフト商品は地元企業が開発した。「灯火親しむ読書」(キャンドルグラス+キャンドルセット、1430円・税込み)や、「陽だまりの中の読書/木漏れ日の中の読書」(オリジナルアロマ+アロマウッド、2893円・同)のほか、フレーバーティー、樹のブックカバー、読書用音楽リストの5種類。本と一緒に買って、「五感」を通して読書時間をより豊かにしてもらう仕掛けだ。
「大切な人に贈ってほしい本」は、関係書店や業界外の著名人がそれぞれ選定した。1人1冊、計40冊で、それを紹介する「ギフトブック」カタログも製作した。本やギフトなど販売商品の詳細は、公式サイト(https://www.pre-doku.jp)でも紹介している。
業界外の知見 生かした企画
中国経済産業局の伊東氏は「業界外の力も使って生産性を高めるオープンイノベーションで、でユニークな企画を立ち上げることができた」としたうえで、「本と一緒に何かを買うことで客単価を上げることは、書店さんにとっても、大変意義のあることだろう。今回の取り組みをきっかけに、本とギフトをセットで贈る文化が全国に根付いてほしい」との思いを強くしている。
川上氏も「書店チェーンを超えた画期的な取り組みで、こういった協力はとても重要なことだ。広島から始まり、全国的に盛り上げていくことができるのではないか。そのためにも、ぜひ成果を上げたい」と期待する。
日販広島支店の谷川太郎氏(第一係係長)は、「(経産省のような)国の機関から日販本社が業務を受けるのは今回が初めてのことで、とても良い経験をさせてもらっている。業界外の人たちと協力して、ピンチをチャンスに変えていく取り組みを継続していきたい」と、次の展開も視野に入れている。
商品を展開する広島県(一部岡山県)の20書店は次の通り。
【啓文社】▽岡山本店▽コア春日店▽ポートプラザ店▽コア福山西店▽コア神辺店▽BOOKS PLUS 緑町▽新浜店▽イオン三原店▽西条店▽ゆめタウン呉店▽TSUTAYA啓文社可部店
【フタバ図書TSUTAYA】▽TERA広島府中店▽MEGA中筋店▽ALTiアルパーク北棟店▽GIGA祇園店▽ALTi福山店
【BOOKOFF SUPER BAZAAR】▽広島大手町店▽広島段原店
▽広島 蔦屋書店
▽エディオン 蔦屋家電