トーハンは、登録ユーザー同士が推薦本の情報を交換するアプリ「taknal」と連携した「本との新しい出会い方フェア~taknalで偶然出会った本~」を関西の同社取引15書店で開催(すでに終了)。来店客の反応は好評で、関係者らは読者ニーズをつかむ新しい手法として期待を寄せている。 【堀雅視】
人とのすれ違いを本との出会いに
「taknal」は、大阪ガスの新規事業創造プログラムから生まれた無料アプリサービス。スマートフォンの位置情報を活用し、ダウンロードしたユーザー同士がすれ違うと双方が薦める本のタイトルや100文字以内の感想が届く。2020年末からサービスが始まり、昨年11月時点で約9万ダウンロードされている。
位置情報を活用するため、今回の書店フェアにおいても「書店周辺エリアで人気の本」、「書店の最寄駅、沿線で人気の本」、「全国主要都市で人気の本」といった地域性を打ち出すことができ、読者ニーズに近い商品構成が可能となる。また、大阪ガス側としても本好きが集う書店での展開はユーザー数のさらなる積み上げが期待でき、両者にメリットが得られる。
フェアを企画段階から担当したトーハン東海近畿支社・総括担当の細井泰藏さんは取材に、「『taknal』は、読者に本との新しい出会い方を提供でき、書店への来店動機につながる優れたアプリ。当初からそのサービス内容に関心を持っていた」とし、「当社が掲げる『マーケットイン型の出版流通』を実現するためにも、『どのエリアで、誰が、どのような本を読みたいのか』を把握することは不可欠。大阪の企業という点にも縁を感じ、関西の書店での展開を提案した」と経緯を話す。
呼びかけに賛同した参加書店は、大垣書店イオンモールKYOTO店、喜久屋書店阿倍野店、紀伊國屋書店天王寺ミオ店、ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店、ブックファースト梅田2階店など15店舗。
アプリと書店の融合に手応え
ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店(大阪市阿倍野区)では、近鉄南大阪線(あべの橋駅)や、JR関西本線(天王寺駅)が乗り入れ、奈良在住の来店客が多いことから、近鉄奈良駅周辺などでtaknalにアクセスした人らが推薦する作品を集めた「奈良推し本」をはじめ、沿線での人気作品を並べた。
同店文芸書・文庫担当の伊藤由奏さんは「いろんなフェアを催してきたが、このような形は初めて。来店客の反応は上々で、意外な商品が動くなどの発見もあり展開して良かった」と手応えを語る。
店頭で、PR用のチラシや、しおりに掲載のQRコードを読み込み、ダウンロードする姿や、ラインナップを見てそのまま購入する姿も多く見られたという。
伊藤さんは、「これまでもダウンロードをすれば出版社(作品)の特典が受けられるといった、出版社―読者間でアプリを活用する企画はあったが、今回の試みは地域性が重要で、書店の存在意義も示せる。奈良以外のエリア抽出などもやってみたい」と意欲を示していた。
新しい店頭活性化策に期待
今フェアは期間限定だが、終了後、参加書店のヒアリングなども行い、規模を拡大しての展開も視野に入れているという。
トーハン・細井さんは「1カ月間におよぶフェアをしっかり検証・分析する。各書店の意見も踏まえ、今後も『taknal』を活用して書店店頭を盛り上げる企画に取り組んでいきたい」と話していた。
「taknal」詳細とダウンロード=https://taknal.app/