コーヒー・カルチャーをテーマにした季刊誌『STANDART』(Standart Japan)は社会的かつ文化的、ジャーナリスティックな視点が気に入っていて、最新号だけでなくバックナンバーも切らすことなく、カウンター前に面出しで並べている。
東京は両国国技館に近い路地裏の焙煎所兼カフェで一目ぼれして直接取引で仕入れを始めた。スロバキア発祥で現在は世界70カ国以上で販売されている。日本版編集長の室本寿和さんは福岡在住。昨年4月、地元で自家焙煎のカフェを始めた。家族と過ごす時間を大切にしており、親近感を抱いている。
本は委託ではなく、子どもの文化普及協会(クレヨンハウスの関連会社)や神田の八木書店、注文出荷制のトランスビューなどから買い取りで仕入れている。売れないからと言って返品はできないので時間をかけて売っていくしかない。1年後、2年後、3年後も買ってもらえるだろう、と僕が考える本を仕入れている。実際、消費税率が「5%」と表示された本もお買い上げいただいている。
翌週に新しい号が発売される雑誌には手を出さない。例外は『STANDART』のような雑誌だ。時代の動きをとらえつつ、読み継がれるような本。振り子が一方に傾き過ぎないようバランスを取る。未来のロングセラーを選書している、つもりでいる。
2017年4月のオープン時点で絵本を中心に約330冊だった在庫は現在、約5500冊になった。お客さんから「店の本は全部読んでいるんですか?」と聞かれることがあるが、そんなことをしている時間はない。オープン前、本屋巡りの最中に参加したトークイベントで京都・誠光社の店主、堀部篤史さんが話していた「テーマ、著者、出版社(あるいは編集者)、装幀」を選書の基準にして、読まずに仕入れている。
仕入れに関する限り、僕の本屋は同じ小売業である肉屋、魚屋、八百屋と変わらない。いちいち試食してから仕入れをしている肉屋、魚屋、八百屋はいないだろう。市場などに出かけて素材、産地、作り手などを吟味して判断しているのだと想像する。
鮮度が勝負の肉屋、魚屋、八百屋との違いは商品が日持ちすること、時間が経過しても腐らないこと。つまり賞味期限は長い。
だから僕の店は乾物屋でもあり、室本さんが編集している『STANDART』は鰹節みたいなものだ。
▼第2回(2月17日掲載)「おススメは鰹節」
▼第3回(3月17日掲載)「書いた、走った、飲んだ」
▼第4回(4月14日掲載)「ガラスの下駄」を履いていた
▼第5回(5月12日掲載)サン・ジョルディの日
▼第6回(6月9日掲載:最終回)「いかれた店主」の独り言
1958年山梨県甲府市生まれ。「Readin’Writin’BOOKSTORE」店主兼従業員。東京外国語大学イタリア語学科卒。読売新聞大阪本社、ランナーズ(現アールビーズ)を経て、90年毎日新聞社入社。主にスポーツを取材。論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に2017年3月退社。著書に『新聞記者、本屋になる 』(光文社新書)などがある。
〈店舗情報〉Readin' Writin' BOOK STORE(リーディンライティン ブックストア)
住所:東京都台東区寿2丁目4−7
HP:http://readinwritin.net/
Twitter:https://twitter.com/ochimira?s=20
営業時間:12:00~17:30(火・金17:00、土・日18:00)/定休日は月曜日