日本専門新聞協会は1月27日、恒例の「新春講演会」を東京・千代田区の経団連会館で開催した。講師は脳科学者の茂木健一郎氏が務め、「ウィズコロナの時代でこそ活きる、人間の脳の可能性」をテーマに話した。
昨年の新春講演会も茂木氏の講演を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、緊急事態宣言が出たため中止となった。
茂木氏はまず、「私はいろいろなことに興味があるが、新聞やジャーナリズムにも強い関心がある。新聞は冬の時代とも言われるが、皆さんにエールを送りたい」と強調。
「今の20代以下の若者は、紙の新聞をほとんど読まない。それどころか『Yahoo!ニュース』も一昔前。トレンドはそれさえも見ないという新しい状況になってきている」と紹介した。働いている若い世代も、通勤時は見るが休日は見ないという人が増えているという。
茂木氏は「そうなってくると、社会の共通知、コモンセンスを共有することが極めて難しくなる」と語り、同じ意見の持ち主との閉ざされたコミュニケーションの中で偏見が増幅される「エコーチェンバー」の弊害などを指摘した。
「今、あまりにも情報が多様化しすぎている。そのためにみんなが共有すべき情報が何か、とても見えにくくなっている」としたうえで、「そこで一般紙、専門紙の紙面づくりが生きてくるのではないか。専門紙もそれぞれの業界で『これぐらいは知っておかないと』という共通知を載せている」と語り、スペースに限りがあるため、情報を厳選して載せるという紙の新聞にある「不自由さ」が、かえって大事な基盤になるのではないかとの考えを示した。