第76回毎日映画コンクールの表彰式が2月15日、東京・めぐろパーシモンホールで行われた。日本映画大賞は、アメリカのアカデミー賞で作品賞など4部門にノミネートされている「ドライブ・マイ・カー」が受賞。「護られなかった者たちへ」で男優主演賞に輝いた佐藤健さん、「茜色に焼かれる」で女優主演賞の尾野真千子さんら2021年を代表する映画人がそろい、トロフィーを手に喜びを語った。
会場には新型コロナウイルス感染症対策を施し、関係者やファンら約500人が集まった。毎日新聞社の丸山昌宏社長は「映画界は昨年もコロナ禍で大きな影響を受けたが、クオリティーの高い作品が多く公開された豊作の年だった」などとあいさつした。
「ドライブ・マイ・カー」を監督した濱口竜介さんは監督賞も受賞した。開催中のベルリン国際映画祭で審査員を務めている濱口さんは現地から「役者の仕事をたたえたい。スタッフの支えがあったからこその賞だと思っている」とメッセージを寄せた。
日本映画優秀賞の「すばらしき世界」では、西川美和監督のほか、スタッフ約20人が登壇。西川監督は「自分一人で作ったのではないので、スタッフに声をかけた。汗をかいてくれた人たちと喜べるのはうれしい」と声を弾ませた。同作で男優助演賞の仲野太賀さんは「ふさわしい俳優になれるよう精進したい」とビデオメッセージで語った。
また、これまで吉永小百合さんらベテラン女優が受賞している田中絹代賞を受けた宮本信子さんは「これまでいろんな役もやったし、もういいかなと少し思っていたけど、田中さんに『もうちょっとがんばんなさいよ』と言われた気がする。まだがんばります」と会場に笑顔を振りまきながら宣言。大きな拍手を受けた。女優主演賞の尾野真千子さんは「俳優をしていて孤独を感じることもあったが、この作品では一人じゃない、みんなとやってるとすごく思えた」と振り返った。スポニチグランプリ新人賞の2人も同作で共演した。片山友希さんは「少しだけ自信がついた。コツコツと続けたい」、和田庵さんは「今まで以上にやる気になった」と話した。
男優主演賞の佐藤健さんは「光栄です。素晴らしい作品に声をかけてくれたことに感謝したい」と述べた。女優助演賞の清原果耶さんも同作に出演。「人間として、俳優として成長できるよう努力します」と語った。
「水俣曼荼羅」でドキュメンタリー映画賞の原一男監督は「私の願いは、水俣病は終わった、という日本の空気を変えること」と呼びかけた。「岬のマヨイガ」でアニメーション映画賞の川面真也監督は「岩手県大槌町が被災地ロケハンに協力してくれて、いい影響を与えてくれた」と感謝した。
特別賞は、7月に閉館が決まった岩波ホールに贈られた。支配人の岩波律子さんは「メセナが通用しなくなった。最後まできちんと仕事をして終えたい」とあいさつした。