【2022年 学参・辞典特集】ジュンク堂書店松坂屋高槻店(大阪府高槻市) 学参は未来の顧客づくりに不可欠

2022年2月28日

大阪屈指の書店激戦区

 

書店激戦区、教育熱高い地域の要望に応える

 

 大阪と京都の中間に位置する大阪府高槻市は、JR京都線と阪急京都本線が並行し、両府への通勤、通学の利便性に優れたベッドタウン。「住みたい街」や「住み心地」ランキングでも上位に名を連ね、人口は大阪43市町村のなかで6番目に多い人気の市。教育熱も高い地域で、JR、阪急の両駅前には小中高、各層向けの学習塾が集中する。駅前の商業施設や百貨店内に大型書店が構える書店激戦区でもある。

 

 ジュンク堂書店松坂屋高槻店は、JR高槻駅前の百貨店「松坂屋」4階に売場面積400坪、学習参考書には30坪を活用。京都、大阪、また東京の大学を目指す受験生に、高校も公立では同市内の三島、槻の木、私立は関西大倉(茨木市)、大阪青凌(島本町)といった進学校受験、さらに中学受験も盛んなことから小中高全世代に対応すべく学参の在庫は約2万冊と充実させる。

 

学習参考書協会の講師経験もある川山さん

 

 ジュンク堂書店各店で学参担当歴20年、学習参考書協会の勉強会で講師を務めた経験もある川山英樹さん。現在は、関西地区エリアマネージャーと丸善京都本店(京都市中京区)店長を兼ねる。そして、一昨年まで国内最大級2000坪を誇るMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(大阪市北区)の学参売場を受け持つなど幅広いノウハウを培ってきた松坂屋高槻店の学参/語学書担当・木原直美さん。経験豊富な二人に同店独自の展開手法、学習指導要領改訂への対応策、参考書を取り扱うポイントなどを聞いた。

 

地元学習塾とのタイアップ企画

 

関西難関私大専門塾とタイアップ

 

 同店は昨年から、関西の難関私大専門の塾と連携したフェア(写真)を展開している。京阪神、愛知県に校舎を持つ「マナビズム」の高槻校に川山さんが企画を持ち込み、塾本部側も趣旨に賛同し、快諾を得た。川山さんは「コロナ禍の影響もあり、近隣の進学を目指す人が増えている。中でも名門の『関関同立』(関西、関西学院、同志社、立命館)は変わらない人気で、そこに特化した塾の推薦参考書は引きが強い。書店の競合も多いので、こういった企画で来店いただく付加価値を高めたい」と狙いを話す。塾のPRにもなり、相乗効果が生まれているという。

 

 同店の売れ筋は『速読英熟語』(Z会)、『システム英単語』(駿台文庫)、『サピックス重大ニュース中学入試用』(代々木ライブラリー)などだが、木原さん推薦は「小学生のための思考力ひろがるワーク」シリーズ(Z会)。木原さんは「大学入学共通テストが暗記より考える力が必要になったこともあり、子どもの頃から身に付けさせたいと思う親御さんが増えた」と分析。「『思考力』の言葉が浸透し、Z会制作の説明書きプレートが効果的でプレートを見て商品を手に取る人が多い」と話す。低学年から高学年まで幅広く動くという。

 

圧倒的知名度「自由自在」シリーズ

 

 根強いロングセラー参考書については両氏ともに口をそろえて「自由自在」シリーズ(受験研究社)を挙げる。川山さんは「内容的にしっかり掘り下げられ、解説もポイントを押さえてわかりやすい。1冊に1年分すべてが盛り込まれているので持っておくべき参考書」と推奨する。木原さんも「知名度が圧倒的。保護者が『昔、使っていた』と必ず口に出る」と話す。

 

 今年は高校の学習指導要領が改訂となるが、川山さんは「対象となるのは高1生なので、学年によって間違わないよう棚の中で分けることが重要」とし、木原さんも「改訂版を見やすく展開し、高1生をどう引きつけるか考えている」という。去年、異動初年度だった木原さんは「3、4月を好調に推移しながら5月の緊急事態で百貨店が休業になり、ダメージを受けた。開店していれば春は良い数字が出ると確信している。まずはコロナの収束を」と願う。

 

サイクルつかめば楽しいジャンル

 

 学習参考書の扱いについて川山さんは「『春はこの参考書』、『定期テスト対策』、『受験はこの商品』と、毎年、シーズンが訪れる。サイクルをしっかり理解できれば楽しくやりがいがある」とし、「来店客は毎年変わるが、参考書を買いに来た学生が数年後、趣味の本などを買いに来てくれると『受験終わったんだな』と感慨深くなる」と話す。

 

 最後に「幼少期からドリルなどで『書店』に馴染んでくれれば成長とともにコミック、雑誌、実用書とずっと通ってくれる。学参は将来の書店利用者の入口で非常に重要なジャンル。これからも大切に扱っていきたい」と語っていた。【堀雅視】