自然と都市が共存しているまちである埼玉県戸田市。都内のベッドタウンとして発展してきた。未来屋書店の北戸田店は、JR埼京線北戸田駅から徒歩10分、近くに大きな幹線道路も通る中型ショッピングモール「イオンモール北戸田」(戸田市美女木)の3階フロアの一角にある。
平日は午前中から地元の老若男女が店を訪れ、夕方からは学生らも加わり混み始める。そして、土日は全く別の様相に。イオンモールで買い物を楽しむファミリー層で、1日中にぎわう。そんな北戸田店は40代女性をメインターゲットに店づくりをしている。
北戸田店で長く学参担当を務めてきた大庭身江子さん。全国に約300店舗ある未来屋書店の中でも、北戸田店は「中学学参」「小学学参」「キッズ(児童書)」の売り上げがベスト10に入るという。地域特性もあって、特に中学学参の売り上げが大きい。「近年は中学学参の棚を増やすなど力を入れている。店の特性に合わせて、強みを伸ばし、生かしていくコーナーづくりを」と考えている。
大庭さんは「この店に来れば、(学参が)何でもそろうと認知されている」と感じている。そのため、「この店だけで(学参の)全体の流れ、最近の傾向などが分かる品ぞろえを心がけている。商品を選べないお客さまも多いので、相談されたらしっかり対応できることも重要」と考えている。
また、学参の売り上げを伸ばすのに「未来屋書店・アシーネ公式アプリ」も大きなきっかけになるという。特典、ポイント付与などがこの店で学参を購入する動機になる。さらに「北戸田店独自に、大手出版社などと協力して、(辞書引きなど)体験イベントを数多く開いてきた」と大庭さん。今はコロナ禍で休止中だが、「やはりお客さまと直接つながることができる大切な機会」と、再開に向け準備を進める。
そして、この店の特徴は「普通」の学参だけではない。大庭さんが今、最も力を入れているのが「昆虫」書籍の展開だ。幼いころから昆虫が大好きで、戸田市が環境保全の取り組みに力を入れていることもあり、昆虫に関する本や展示物が店の入口付近に大きく陣取る。
「昆虫に関する書籍の取り扱い点数は、全国で最も多いのでは」と語るほど、今ではこの店の大きな売りになっている。北戸田店のツイッターも、いつからか昆虫がメインに。今では全国の昆虫ファン、学者らとつながる貴重なツールでもある。
さらに、最近では「SDGs」に関する書籍も充実させている。地元の子どもたちがこのコーナーでSDGsに触れ、市内の環境保全活動に取り組む事例もあるという。昆虫もSDGsも、子どもたちにとってまさに「本物」の学参と言えるだろう。
「他のお店でも、働く自分たちが好きなことを前面に出したコーナーを展開できればいい」と考える。「そうやって書店員が味付けすることで、お店それぞれの特徴を出すことにつながる」との思いを強くしている。【増田朋】