――絵本ナビが行っている電子化の取組の背景を教えてください。
絵本ナビは、「絵本・児童書の市場を拡げるためのチャレンジを行う」こ
とをミッションの1つに掲げています。デジタルで絵本が読めるようにする取り組みは、まさに紙も電子も含めた絵本・児童書の市場を拡げるためのチャレンジです。
もちろん、子どもにとって絵本における最高の体験は、紙の絵本を大好きな大人の膝の上で読んでもらうことでしょう。この素晴らしい体験が一層増えていく未来を創っていきたいと考えています。
では、それ以外は意味がないかというとそうではなく、インターネットとデジタルを用いることで、多くの作品と読者の出逢いが生まれ、購入や閲覧による収益機会が生まれていきます。例えば、映画は映画館で観るのが最高の体験ですが、配信によって映画と視聴者の出逢いが多く生まれていることと近いかもしれません。
――実際の取り組みの内容はどんなものでしょうか。
絵本ナビでの作品の掲載においては、表紙や書誌の掲載→「ちょっとためしよみ」(数ページ)掲載→「全ページためしよみ」掲載→「読み放題」と、出版社が掲載レベルを選べるようになっています。
「読み放題」は、絵本ナビプレミアムサービスに登録した有料会員限定で何度でも読むことができるものです。出版社と絵本ナビで著作物利用許諾契約を締結の上で、契約に基づいた収益分配金をお支払いします。分配金は通常、読まれた回数の比率に応じての分配となります。紙の本の購入までには至らないけれども、作品に興味があって読んでみたいライトな読者の閲覧を収益にできます。
「全ページためしよみ」は、絵本ナビに無料登録したユーザーが、1冊につき1回に限って全文ためしよみできる仕組みです。こちらは紙の本の販売促進が主旨で、収益分配はありませんが、作品との出逢いと読者の購入判断の後押しの効果があります。
実際に、対象作品を販売する場合の配送料を絵本ナビが負担することもあり、販売が約40%増加しています。発行部数的になかなか全国の書店に行き渡らない作品でも、読者に読んでもらい、販売につなげることができます。ためしよみファイル制作のコストは絵本ナビが負担しており、絵本ナビパートナープログラム(※1)に加盟している出版社限定の特典としています。
――出版社が何かしら取り組みを行おうとした場合、絵本ナビはどのようにサポートできますか。
出版社により、また著者により、インターネットやデジタルの取り組みに対する考え方は様々です。その考え方の段階に応じて、絵本ナビでお役に立てることが提案できます。
すでに月額制でのデジタル配信の取り組みに関心をお持ちであれば、プレミアムサービスでの読み放題にご参加いただけます。新刊はもちろん、良い作品なのだけれども販売面で落ち着いてきてしまった既刊作品に新たな光を当てる、というメリットが大きいと思います。どの作品を出して行くかは、個別にご相談できます。
デジタル配信を行うつもりはないけれども、試し読みや絵本ナビでの販促PRに関心をお持ちであれば、出版プロモーションの部署がご相談をお受けします。著者インタビューやレビューコンテスト、メルマガやサイトでの紹介など、予算や作品内容に応じて様々なメニューを用意しています。
なお、電子書籍(月額制ではない)としての販売については、絵本ナビでは現状行っていません。
――最後に記事の読者にメッセージがありましたら。
プロの作家が、プロの編集者と渾身の力で生みだし、出版社が経済的なリスクを負って出版した作品には、必ず届けるべき読者がいると考えます。一方、デジタルで読める絵本児童書はまだ多く
ないため、良質でない作品や違法コンテンツが勢力を伸ばしつつあり、危機感を持っています。悪貨が良貨を駆逐することにならないよう、デジタルの世界でも、本物の絵本児童書がより多くの親子に届くことを願っています。
――ありがとうございました。
※1:出版社が絵本ナビをプロモーションのプラットフォームとして活用できる月額制プログラム。50社以上の絵本児童書出版社が加盟している。
株式会社絵本ナビ
代表者:代表取締役社長CEO 金柿秀幸
所在地:〒163―0228 東京都新宿区西新宿2―6―1 新宿住友ビル28 階
設立日:2001 年10 月25 日
資本金:1 億8967 万375 円
問い合わせ:(在宅勤務体制継続のためメールで)
▽プレミアムサービス(月額制読み放題)について=コンテンツ・ラーニング事業部 担当・嶋田ml_kaiin@ehonnavi.net
▽作品の販促、パートナープログラムについて=出版プロモーション事業部 担当・深津 ml_pub@ehonnavi.net