純愛、震災、甲子園がテーマの名作揃う
神戸新聞社と兵庫県内の書店、販売会社らで組織する神戸新聞ブッククラブ(KBC)が、兵庫県にゆかりのある著者、または兵庫県が舞台の小説の中から、県内読者に読んでほしい本を選ぶ「ひょうご本大賞」を創設し、最終ノミネート3作品を3月18日付神戸新聞紙上で発表した。
KBCは、兵庫県内加盟書店と取次会社、神戸新聞社が「活字文化の向上・活性化を図ること」を目的に結成され、良書の積極的な書評掲載、本に関するイベント告知・取材などに取り組む。
「ひょうご本大賞」創設にあたり、KBC内にひょうご本大賞実行委員会を発足。兵庫出身、在住の著者、または同県が舞台の小説を22作品選び、実行委員会内、および出版社にも意見を求め、ノミネート作品を選出した。
ノミネート作品は河野裕『昨日星を探した言い訳』(KADOKAWA)/真山仁『それでも、陽は昇る』(祥伝社)/朝倉宏景『あめっちのうた』(講談社)。
『昨日星を―』は、兵庫県在住の著者が描く、総理大臣を目指す少女と、潔癖少年の純愛物語。『それでも、―』は、阪神・淡路大震災で妻子を亡くした教師が、東日本大震災で被災した小学校に応援として赴任。神戸に戻り、震災を語り継ぐなかで見えた課題、真の復興、未来に伝えるべき自身の使命を追求する。『あめっち―』は、運動が苦手な主人公が入社した甲子園球場の整備を請け負う「阪神園芸」が舞台のスポーツ裏方小説。
「組合としても取り組みたい」
加盟書店の井戸書店(神戸市須磨区)・森忠延社長は取材に対して「神戸市民の約6割が震災を知らない世代になった。『それでも―』は、神戸、東北と復興を経験した人が語り継ぐ内容で、とても意義ある作品。『あめっち―』は、甲子園球場、阪神園芸の小説を兵庫県人が読まない理由はない」と称賛する。『昨日星を―』も複数の実行委員が推薦した良書だという。
これから神戸新聞読者らによる一般投票(4月5日締切)を経て大賞が決まる。投票者には抽選で図書カードがプレゼントされる。
兵庫県は、日本標準時子午線が通る自治体が多いことでも知られることから、大賞発表は「時の記念日」の6月10日とした。
兵庫県書店商業組合の理事長も務める森氏は、「兵庫と本屋をアピールできる格好の機会。KBC加盟書店は10店ほどだが、書店組合としてもこの事業に取り組むことができればもっと活気づく。組合事業と関連づけられないか検討したい」と意欲を示していた。【堀雅視】