どっぷりつかるなら読書がいいね! 兵庫書店組合×中高生コラボ

2022年4月6日

 兵庫県書店商業組合(森忠延理事長・井戸書店)が、中高生のインターネット依存や、関連トラブル防止策の一環として、「読書」を推奨する取り組み「どっぷりつかるなら読書がいいね!」をスタートさせた。保護者、自治体、学校関係者らから効果の期待が高まっている。

 

「どっぷりつかるなら読書がいいね!2022」のポスターを手に森氏

 

ネット依存対策に一役

 

 兵庫県は青少年の非行防止や健全育成において、官民が連携して取り組んでおり、昨春、県の青少年課が開いた会議で、インターネット依存や関連トラブルが議題にあがった。

 

 携帯電話や煙草販売業など、青少年との関わりに警戒が必要な業界が参加するなか、書店業界の代表として出席した森理事長。「書店もなにか対策ができないだろうか」と思案し、「ネットに夢中になる時間を読書に費やせば、依存やトラブルも減るのでは。書店組合として中高生にふさわしい本を推薦したい」と構想を立てた。

 

 兵庫組合理事会で賛同を得て、具体的な活動内容を詰めていく。事業の名称は、「どっぷりつかるなら読書がいいね!」に決定。書店からの一方的にならないよう、推薦本の半分は中高生自身に選んでもらい、推薦理由(200~300字)も添える。

 

 書店、中高生サイドがそれぞれ12冊を選び、毎月、書店推薦1冊、中高生推薦1冊を「どっぷり―」公式LIENで発信する。

 

感銘受けた学校も出現

 

 ただ、初めての取り組みで認知度も低く、森理事長によると、「各書店、いろんな学校に声をかけてくれたと思うが、当初は選書が集まらず苦労した」という。

 

 しかし、地道に募集を続けると、趣旨に感銘した国語教師が生徒に呼びかけて、多くの作品を出す学校も現れた。推薦本が出揃い、各書店、学校用のポスターを作成。ポスターは県下の全中学、高校に配布した。選書ラインナップは書店組合ホームページから閲覧できる。

 

 森理事長は「小学校では朝読活動など本を読む機会が多いが、中学になると部活、受験などに追われ、急に時間が奪われる。なによりスマホを持ち始め、依存になるケースも。その時間を読書に使えば健全な育成につながる」と読書の重要性を訴える。また、「書店側から見ても、ネットに使う時間が増えれば増えるほど売り上げが減少している。まさに青少年のネット依存は他人事ではない」と危機感を示す。

 

井戸書店(神戸市須磨区)での展開

 

兵庫を代表する読書推進事業に

 

 書店組合選書のうち森理事長自身も、原田マハ『翔ぶ少女』(ポプラ社)、行成薫『立ち上がれ、何度でも』(文藝春秋)などを推薦した。『翔ぶ―』について、「原田先生が、阪神・淡路大震災で両親を失った兄妹の絆、奮闘、奇跡を描いた。中高生はあの震災をリアルでは知らない。ぜひ読んでほしい」と推奨。

 

 『立ち上がれ、』については「イジメが題材だが、『プロレスとは』に焦点を当て、親友だった2人がプロレスによって離れてしまい、最後は本物のプロレス団体で戦うという読み応えある作品。社会問題について、何かを感じとってほしい」と話す。

 

 最後に「今年の1回で効果が出るとは思わない。継続してこそ意義がある。書店側も積極的に参加してほしい。来店した人に『自分が推薦した本』と紹介できれば素晴らしいコミュニケーションが生まれる。毎年恒例の読書推進事業に成長させたい」と思いを語っていた。

 

 詳細は、兵庫組合のホームページ、または「どっぷりつかるなら読書がいいね!」公式LINEアカウントで。【堀雅視】