丸善ジュンク堂書店が、読者に「人生の糧になった本」、「救われた本」を募り、社内選考員が厳選した30作品を展示する「あなたを救った本、おしえて下さい」フェアを系列の全国90店舗で開催(5月15日まで)し、来店客の反応は上々だという。
同社担当者によると、「社会の急激な発展でストレスの蓄積、メンタルを損なっている人が多い中、書店で『癒し』や『救い』を提供したいと社内で話していたところに『救った本』のアイデアが出た」という。発案者は、丸善有明ガーデン店・石川格店長。「読者に『救われた本』を募集しよう。出版社や書店からの押し付けでなく、読者と一体になったフェアになる」とし、販促会議では満場一致で採用され、全店フェア(一部対象外あり)が実現した。
アンケートを開始すると、「出会えてよかった本」、「人生に欠かせない糧になった本」、「救われた本」がコメント付きで約2500件集まり、関係者は予想以上の反響に驚きを見せた。
仕入れ、販促、フェア推進担当など各部署から選抜されたスタッフが、「コメントのリアルな表現」、「共感できる内容」、「万人に起こり得る困難の救いになる」などを基準に30冊を選出。30点すべてに投稿者コメントのPOPを作成して展示。対象作品はhontoポイント10倍の特典も設け、全社を挙げて展開する。
読者+書店員で本の力を証明
丸善京都本店(京都市中京区)でも好調な動きを見せ、川山英樹店長によると「フェア開始3日で追加発注が必要な作品もある」という。
推薦作品を聞くと、『最後だとわかっていたなら』(サンクチュアリ出版)を挙げ、「私も親の立場として、子どもに愛情を伝えたかった気持ちに共感した」と話す。「数年前の話だが、懇意にしていた本好きのお客様が同書を数十冊購入して周囲に配るほど絶賛し、私にもプレゼントしてくれた。本の素晴らしい内容と、印象深いお客様を思い出すきっかけになった」とエピソードを語ってくれた。
今回のフェアでは、30冊とは別に開催店舗の担当者が独自にセレクトした「救った本・プラスワン」も展開している。丸善京都本店は、女性の文庫・新書担当者が『本は読めないものだから心配するな』(筑摩書房)を選んだ。
また、一般投稿でも『本を読めなくなった人のための読書論』(亜紀書房)があり、川山店長は「本は気軽に接するイメージだが、『読めない』の壁にぶつかり、もう一度読むために、また『本』が登場する。本の力を感じた人が多いことを再認識でき、読者、書店員双方から選ばれたことも面白い」と感想を述べる。
フェアのタイトルに「2022」を付け、関係者は「毎年、開催していきたい」としている。選出された30冊と各コメント、「店舗スタッフのプラスワン」は、同社ホームページから閲覧できる。【堀雅視】