偕成社が刊行した堀川理万子氏の絵本『海のアトリエ』が4月20日、第53回「講談社絵本賞」に選ばれた。2021年5月刊行の同書は、絵本で初となる「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」(東急文化村主催)も受賞している。
同書はタブロー画家として活躍する堀川氏が、海辺のアトリエに暮らす画家のもとで過ごした少女の1週間を描いた絵本。舞台は昭和30年代、神奈川県の海辺のアトリエ。作中で登場する「絵描きさん」は、堀川氏が子どもの頃に初めて出会った「子どもを子どもあつかいしない」大人だった女性画家をモデルとしている。
同書の対象年齢は小学校低学年だが、幅広い世代から反響があるという。読者からは「子ども扱いせず、自然に受け入れ、共に過ごし、愛するとはこういうことなのだと温かい気持ちになる絵本だった。私も誰かに対してこういう存在になりたいと思った(59歳)」といった声が寄せられている。
また、21年に「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」(東急文化村主催)を受賞した際も、作家の江國香織氏は選評で「一人で選んでいいというこの贅沢な文学賞に、これ以上なくふさわしい、贅沢な絵本だと思う」とコメントした。
同賞はパリの老舗カフェが主催する「ドゥマゴ賞」の精神を引き継ぎ、1990年にBunkamuraが創設した文学賞で、任期が1年の「ひとりの選考委員」によって受賞作が選ばれる。同年の選考委員は江國氏が務めた。