書籍出版・セミナー・教材・デジタルコンテンツを連携したビジネスを展開するフォレスト出版は、2021年8月に光和コンピューターの「出版ERPシステム」を稼働し、書籍の販売管理や在庫管理の業務が効率化された。今後は電子書籍に対応する印税管理システムの導入も予定している。
【本紙増刊B.B.B5月号掲載】
出版市場ピークの1996年創業
同社はビジネス書や経済書など年間60点余の新刊を刊行し、稼働点数は600点余。従業員数はパートタイマーを含めて30人。このうち営業は営業管理2人を含めて8人の体制だ。
創業者の太田宏社長は、大学卒業後に音楽教科書などを発行する出版社に入社。その後、編集プロダクションに移り、ここで手掛けた経済書やビジネス書がベストセラーになったこともあり、出版業界の売り上げがピークを迎えた1996年にフォレスト出版を立ち上げた。
創業時のメンバーは太田社長を含めて編集者3人と営業3人、経理2人の8人。当初から取次口座を開設してのスタート。
創業3年目の1998年に刊行した堺屋太一著『未来はいま決まる』が10万部を超えるなど順調な船出にみえたが、「最初の3年ほどは大変でした」と太田社長。新刊が売れても入金は6カ月先。既刊本が少ないなかで資金繰りが苦しかったからだ。
ユニークなビジネスモデルで成長
そんな中、「急場しのぎ」(太田社長)で始めた会員制のセミナー事業が、現在のビジネスモデルにつながった。
行ったのは会員向け投資指南。投資助言業の登録を行い、投資家の大竹愼一氏による推奨銘柄などの教材を会員に月2回郵送し、セミナーも開いた。
2000年には当時の出版社ではまだ珍しかったWEBとメールマガジンによる読者のコミュニティー「フォレスト出版リーダーズクラブ」も開始した。
こうした中から太田社長が生み出したのが書籍とセミナー、教材による「スリーステップ営業」だ。
高額な教材をいきなり購入する人はいないが、書籍で興味を持った著者の話を直接聞くためセミナーに参加し、その話に納得すれば教材の購入にも結び付く。書籍を入り口にして、会員制度によってロイヤルカスタマーを育てる戦略だ。
効率化・物流との連携を実現
かつて同社は販売や在庫管理をExcelで行っていたが、業務の効率化や、働き方改革を進めるために基幹システムを導入することにした。
太田社長が以前から知っていた光和コンピューターに依頼。あわせて在庫管理など物流業務を工藤出版サービスに委託した。
システム導入について、創業メンバーの一人で取締役セールス&マーケティングカンパニーCEOの小池亜以氏は、「延勘や長期委託などの計算が自動化されたことが大きかった。請求の出力も早くてスムーズになりました」と効果を語る。
クラウド化によって、営業にかかわるメンバーがそれぞれの端末でシステムを使えることで、入力漏れといったミスの防止や、作業効率の向上を実現。また、工藤出版サービスとのシステム連携によって在庫の把握も容易になった。
コロナ禍での導入になったが、「リアルとオンラインによる打ち合わせを行うなど、フレキシブルに対応してもらえました」と小池氏は述べる。稼働後は順調で、これからWindows11への対応も進めていく。また、複雑な電子書籍の印税管理に対応するため、印税システムを導入する予定だ。
フォレスト出版株式会社
代表者:太田 宏
資本金:5000万円
設 立:1996年4月1日
所在地:〒162−0824 東京都新宿区揚場町2−18 白宝ビル7F
電 話:03−5229−5750