5月に創刊100年を迎えた点字新聞「点字毎日」で2011年から8年間にわたって連載されたエッセーをまとめた『世界を手で見る、耳で見る 目で見ない族からのメッセージ』(毎日新聞出版刊)が出版された。
著者の堀越喜晴さんは2歳の時に病気で光を失った。言語学とキリスト教文学が専門の学者で、今は明治大学などで教壇に立っている。エッセーは、日々の暮らしで感じたことをユーモアも交え、率直につづった。
「私の感覚からすると、視力とはすなわち超能力だ」「あればきっと便利なのだろうけれど、なけりゃないで十分やっていけるようなしろものなのだ」。電車に乗って困るのは、すいていそうだけれどどこの席が空いているか分からないこと。「そんな時、『ここが空いていますよ』の一言が言っていただけたら……」
「果たして障害というものは、(中略)ただただ撲滅すれば良いというものなのだろうか?」。障害を持つ人がいて、なお幸せであるような社会こそが、本来あるべき姿ではないか。そんな問いを読者に投げかけている。