【海外エージェント特集2022】株式会社フォルトゥーナ 版権仲介に留まらない、出版社のパートナーとして

2022年7月5日

フォルトゥーナ・榎本社長

 

 フォルトゥーナは、世界最大の図鑑出版社・DK社の版権や『バットマン』等で知られるアメコミ大手・DCの版権を日本で独占的に扱う一方、文芸・実用分野等の日本語書籍の翻訳権の海外輸出、海外書籍の日本への翻訳権輸入も行っている。

 

 国内外を問わず、パートナー出版社との包括的できめ細やかなビジネス構築を得意とするフォルトゥーナの榎本麻衣子社長は、これらの事業を社の「柱」と語り、「8期目に入り、どの柱もしっかりと育ってきた」とにこやかに話す。

 

取り扱う商材は図鑑からコミック、実用書と多岐に渡る

 

海外共同制作・DK 社

 

 DK社の図鑑に関しては、特定のジャンルではなく、幼児向けのものから、専門的なものまで、幅広く好調である。コロナ禍を経て、児童向けの学習図鑑や一般向けの網羅性の高い図鑑の重版が更に増えているほか、電子書籍の売上も増えているという。「一言語での出版では収支が成り立たないような、巨額の製作費の、高価格帯、高品質の商品を、少部数から安心して出版できるDK社のビジネスモデルは、日本のような成熟した出版市場においても高い需要がある」と榎本社長は語る。

 

有名IP でのオリジナル企画

 

 同社はアメコミの翻訳権だけでなく、コンテンツを使ったオリジナル企画にも関わる。DCの人気IPであるジョーカーが、赤ん坊になったバットマンの子育てに奮闘する日本発漫画『ワンオペJOKER』(講談社)の連載が話題だが、同社は日米両社の仲介を務め、企画の立上げ交渉から、原稿内容のチェックまで全ての工程に関わる。「世界に冠たる日本の漫画文化に、このような形で関われることは私達の誇り」という。

 

日本の書籍が持つ可能性

 

 同社が、主婦の友社から許諾を受けて仲介を行った簡体字中国語版『減糖生活』(北京快読文化傳媒有限公司)が実売100万部を突破した。「日本では、戦前より全ての人々に役立つ質の高い出版物が精力的に出版されてきた」と語る榎本社長は、「最近は、ごく一般的な日本の生活や考え方が、海外での注目を集めている」と話す。特に欧米を中心に日本の女性文芸作家の作品への注目が高い。「これまで、日本の女性の言葉を紹介する機会は限られてきた。世界的な多様化の流れもあり、そこに不均衡があったからこそ一気に花開いている」と榎本社長。

 

 一方で中国市場では、健康法や医療、子育てなど、日本の実用書ニーズが高いという。しかし、関心が高いがゆえ、競争も激しい。榎本社長は「だからこそ私達は、戦略を含めて出版社にもう一歩歩み寄る活動を行いたい」と語る。

 

エージェントの枠を超えて

 

 同社は、設立当初からの理念に基づき、本の選択から実際の制作、販売戦略、マーケティングといった全ての過程で出版社に寄り添う活動を行っている。榎本社長は「私達は実際に本の出版はしませんが、出版ビジネスの現場を学ぶからこそ出版社のニーズが理解できる」としたうえで、「版権を仲介したら終わりにはしたくない。皆様に教えていただきながら、出版社のブランド力を高め販売支援をする仕組みを構築してきた」と話す。

 

 DK社の事業においては、先方のマーケティング予算を受けて、書店店頭や電子書店でのフェア開催、児童文学評論家・赤木かん子氏と協力しての学校司書向けの一連の活動、絵本ナビ、TRCや各生協とのコラボレーション等の販促支援活動を行っている。

 

 榎本社長は「各出版社は既に最大限の販促を行っている。その上で、私たちは更に一冊でも売れるお手伝いがしたい。出版はこうしたら必ず成功するというルールがあるわけではない。だからこそ出版社と協力し、成功の確率を上げてゆく試みには意味がある」とし、「これからも出版社にとっての信頼できるパートナーであり続けたい、それが私達の存在意義」と力を込める。

 

店頭でのDK社図鑑フェア

 

株式会社フォルトゥーナ

所在地:東京都文京区本駒込6-1-19石田ビル3F

ホームページ:www.frtn.co.jp

問い合わせ:info@frtn.co.jp

 

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