東証グロースに上場 HOUSEI・管祥紅代表取締役社長に聞く 紙とデジタルをシームレスでつなぐ 新CMS「NOVO」も提供開始

2022年8月22日

 新聞や出版などメディア向けシステム開発大手のHOUSEI(ホウセイ)株式会社が7月28日、東京証券取引所グロース市場に新規上場した。同社は日刊スポーツPRESSと提携し、日本発の新聞組版統合クラウドシステムを開発するなど、メディア企業の共通基盤となるプロジェクトを相次いで市場に投入してきたシステム開発大手。最近では、デジタルメディア向けに独自開発の新CMS「NOVO」を開発し、デジタルと紙のビジネスをシームレスにつなぐプラットフォームとして展開を始めている。経営戦略について、同社の管祥紅社長に聞いた。【コンテンツジャパン代表取締役・堀鉄彦】

 

 

 

──上場おめでとうございます。まずはHOUSEIの事業の全体像についてお話を伺いたいと思います。

 

 HOUSEIは新聞や雑誌など、メディア企業向けの情報システム中心に、さまざまなサービスを展開してきた企業です。

 

 元々は、中国で広く新聞・出版社向けのシステムを手掛けている北京北大方正集団公司が、日本のマーケットを開拓することを目的として1996年3月に設立。中古車情報誌「Car Sensor」向け編集システム、チラシを中心とした流通小売業の販促システム、出版社台割進行システムなどを手掛け、2014年にMBOを行って独立しました。

 

 最近では越境ECや、医療情報システムなど、メディア以外の分野にも事業を広げています。

 

──新聞製作のDXでさまざまな提案を始めています。

 

 たとえば、新聞の組版システムでは、日刊スポーツPRESSと共同でクラウド型のシステムを開発しました。10年9月に新聞協会賞をいただいた「東阪統合組版システム」をベースに、クラウド基盤で動くようにしたもので、保守・運用コストが5年総額で3分の1、開発・導入コストは2分の1程度になるなど、大きなコストメリットを生み出すシステムとして評価していただいています。

 

 クラウドサービスは22年から提供を開始しています。導入経費が非常に安く、開発や保守などの業務が大幅に効率化され、リモートでの作業が可能となるなど、業務改善にも寄与します。

 

──デジタルメディアのCMSも発表しました。

 

 デジタルメディアの記事製作・配信をトータルでカバーするCMSについても経験豊富です。20年以上前から手がけてきました。今夏から営業を開始した「NOVO」は20年来のCMS開発経験を活かしつつ、メディアビジネスの進化に柔軟に対応できるよう、全面的に再構築したシステムです。

 

──機能を紹介していただけますか。

 

 最大の特長は、機能を自由に追加・変更可能なマイクロサービス型のCMSであることです。記事作成、校正などの機能が独立したマイクロサービスのプログラムとして作られ、必要に応じて組み合わせを変えることができます。新たな機能の追加も容易で、それぞれが独立しているため、保守やメンテナンス性にも優れています。 

 

 外部サービスとの連携機能が充実しているのも特長です。HOUSEIの組版システムにデジタルメディア用に作成した記事や素材を流用でき、デジタルメディアと紙媒体の制作作業をシームレスにつなげることができます。

 

 HOUSEI以外の企業が提供するサービスとも、連携可能なオープンなプラットフォームでもあります。たとえば、TwitterやFacebookなどのSNSや、カスタマーデータプラットフォーム、支払い管理システム、コンテンツ配信サービス、Webパフォーマンス計測や、利用データ分析システムなど、メディア企業が必要とするサービスには多種多様なものがありますが、最適なサービスと柔軟につなげられるようになっています。

 

 メディア企業向けのシステムを長年開発してきた経験を活かし、ワークフロー管理の機能も充実しています。記事作成からデスクチェック、出稿、配信といったそれぞれの作業とその管理が簡単にできるよう、直感的分かるインタフェースになっており、使いやすさも工夫しています。

 

 NOVOは、組版やDTPシステムとシームレスな連携ができるCMSです。既存の紙媒体ビジネスの付加価値を上げながら、デジタルのビジネスを伸ばしていくことができるという意味で、貴重な存在ではないでしょうか。

 

 

NOVOシステムイメージ差し替え用のサムネイル

HOUSEIが開発したコンテンツマネジメントシステム「NOVO」の全体像。CMSの概念を超える多彩な機能と、外部システムとの連携が特長

 

 

──CMSの枠を超えたようなサービスが期待できますね。

 

 HOUSEIは、NOVOをCMSというより、コンテンツプロダクションシステムとして考えています。デジタルメディアのCMSとしてスタートしていますが、顧客の要望に応えてマイクロサービスを追加し、ユーザーがその機能向上をそれこそ、これまでのビジネスの枠を拡げるような形で続けていくことができます。メディアが取り組むさまざまなビジネスの付加価値を向上させるため、新たなサービスとの連携もどんどん行っていきたいですね。

 

 いうまでもなく、DXは新聞や出版などのメディア企業にとって大きな課題です。できるだけ多くのメディアに使っていただき、メディア産業全体のDX基盤として活用してもらえればうれしいです。

 

──ありがとうございました。