集英社『LEE』 雑誌・Web・通販とも好調 読者ブロガー「LEE100人隊」が牽引

2022年10月4日

 集英社の女性月刊誌『LEE』は、雑誌とWeb、通販の「三位一体」でブランド展開するが、読者ブロガー「LEE100人隊」が成長のけん引役になっている。「ファンが多い雑誌ブランド」と述べる畑江貴子さんに聞いた。

 

『LEE』2022年10月号

 

 同誌は30~40代の女性を対象にしたファッション・ライフスタイルマガジン。1983年創刊で来年40周年を迎える。

 

 昨年の同社ブランド再編で、女性誌編集部に紙とwebの編集長を置き、ブランド統括が統括する体制になった。今年からはWeb編集長の畑江さんがブランド統括を兼ねるようになった。

 

LEEブランド統括兼『LEEweb』編集長の畑江貴子氏

 

 『LEE』は販売部数10万8995部(ABC2021年下期発行社レポート)。「LEEweb」は2016年以降編集部が運営する体制になって月間ユニークユーザー(UU)数は5年間で10倍の514万UU(22年1月時点)に達している。また、公式通販「LEEマルシェ」の年間売上高は7億1300万円を突破するなど、雑誌、Web、通販ともに好調だ。

 

LEEwebのトップページ

 

 一般的な女性誌は検索語の上位に一般名詞がくることが多いが、「LEE」は指名検索が上位に来るという。なかでも「LEE100人隊」の発信に共感するファン層の存在が大きいと畑江編集長は強調する。

 

 LEE100人隊のスタートは2007年と早く今年で16年目を迎える。メンバーはブログの発信はもとより、編集記事づくりや広告タイアップにも参加するなど幅広く活躍する。任期は3年、卒業しても人気ブロガーは「トップブロガー」としてさらに通算10年まで活動。毎年公募し、現在は「トップブロガー」34人を含む134人が在籍する。

 

 LEE100人隊のブログは、日々のファッションや料理の話題から、美容、インテリア、子育てや働き方など暮らしにかかわる様々な話題を取り上げ、月に600~1200本がアップされる。また、タイアップ広告の体験ルポをオファーされることも多く、今秋すでに50人ほどの起用が決まっている。

 

 LEE100人隊担当は、リビング班の副編集長とライター1人。ライターは歴代3人目と長期にわたって担当し、現在の担当者はすべてのブログをチェックしながら「LEE100人隊まとめニュース」も書く。

 

 「担当者は2名ですが、編集部スタッフとLEE 100人隊とはお互いに顔が見える関係で、全員が担当のようなもの。編集部は常にメンバーの状況に目を配り、彼女たちが知りたいことに誌面で応えています。LEE 100人隊は編集部の一員のような存在。一緒に作っている気持ちです」と畑江編集長。

 

 日々のブログにはほとんど謝礼は発生しない。それでも積極的に発信するモチベーションについて畑江編集長は、「大人になっても気の合う仲間を作ることができる場です。良いと思うものを仲間に薦めたいという気持ちだと思います」と述べる。

 

 また、コロナ禍前までは年に1回、同社会議室でLEE100人隊のパーティーを開催してきたが、メンバーは自ら交通費や宿泊費を負担して、翌日は仲間と街歩きを楽しむなど積極的に参加していたという。この3年はオンライン開催になっている

 

 ただ、数年前にインフルエンサーがブームになった時期、「ブログでは拡散しにくい」とクライアントが離れそうになった。しかしその後、クライアントは、生活に落とし込んで発信し続けてくれるLEE100人隊に戻ってきたという。

 

 「いまは第2次100人隊ブームです」と畑江編集長。昨年には子育てが一段落したLEEマルシェの購買層向けに「LEE DAYS」をスタート。リレーコラム連載「LEE DAYS club」にはLEE100人隊卒業生を起用。「LEE100人隊の素晴らしさを強みとして打ち出したい」と新たな広告メニュー作りにも取り組んでいる。

 

*日本ABC協会は10月5日、ABC特別フォーラム2022「雑誌ブランドが持つ良質なファンコミュニティの価値とは」をオンラインで開催する。パネリストは松田紀子氏 (オレンジページ / 『オレンジページ』編集長) 、畑江貴子氏(集英社/LEEブランド統括兼『LEEweb』編集長)、山岡朝子氏(ハルメク/『ハルメク』編集長)。モデレータは星野渉氏(文化通信社/取締役社長執行役員)。