文芸・芸術・児童書などを発刊するカノアは、イランを代表する世界的な映画監督アッバス・キアロスタミ氏による絵本2冊の刊行予定について、キアロスタミ氏が監督する作品への告発を受け、自社サイト上で声明文を公表した。
カノアは10月4日に、キアロスタミ氏が生前に手がけた幻の絵本『ぼくは話があるんだ、きみたち、子どもたちだけが信じる話が』、ならびにユニークなロングセラー絵本『いろたち』の本邦初訳版の刊行を2冊同時に予定している。
キアロスタミ氏の監督作品については、2002年に発表の『10話』に対し、イラン人アーティストのマニア・アクバリ氏が20年にペルシャ語、22年に英語で盗作・性的暴力被害を告発。これを受けて、9月3日に日本で公開を予定していた同監督作品『クローズ・アップ』HDリマスター版を共同配給する東風とノームは、8月26日に公開の延期を決定した。
カノア代表取締役の小島秀人氏は告発への見解を「キアロスタミ氏の著作2冊の初版刊行がそれぞれ1970年と84年であることから、本疑惑との相関関係は認められないと判断した」と述べたうえで、「同氏は故人であり真偽のほどは不明であるため、当初の予定通り、10月4日にこの2冊の邦訳版を同時刊行する」と話している。
さらに小島氏は「すでに事前注文をいただき、予約も行われています。書店さまにご迷惑をおかけしてしまう前に広く業界内に知らしめる必要があると思い、声明文を公表しました。本件を知ってもらったうえで仕入と販売をご判断いただけたら」と語った。
カノアの公式声明全文
アッバス・キアロスタミが遺した2冊の絵本、同時刊行のお知らせ
先日、映画監督のアッバス・キアロスタミ氏に対して、2002年に公開された同氏監督作『10話』の盗作および性的暴力の被害を告発されている方の存在を知りました。
当社は、キアロスタミ氏の著作『ぼくは話があるんだ、きみたち、子どもたちだけが信じる話が』と『いろたち』の初版刊行がそれぞれ1970年と1984年であることから、本疑惑との相関関係は認められないと判断しました。
同氏は故人であり真偽のほどは不明であるため、当初の予定通り、2022年10月4日にこの 2 冊の邦訳版を同時刊行いたします。
これからもご指導とご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2022 年 9 月 15 日
株式会社カノア