日米地位協定の実態を記者たちが追いかけた毎日新聞のキャンペーン報道が1冊にまとまり、「特権を問う ドキュメント・日米地位協定」と題して毎日新聞出版から発売された。四六判296ページ、定価1870円(税込)。
在日米軍の基地利用などについて日米間で取り決めた日米地位協定は、日米安全保障体制の柱の一つである一方、「在日米軍によるさまざまな被害の元凶」とも言われている。「特権を問う」取材班は、協定が2020年に発効から60年の節目を迎えるのに合わせ、協定を巡る実態を明らかにしようと結成され、東京、西部、大阪の各本社から20人を超える記者が取材に参加した。
取材班がこれまでに紙面とウェブサイトに送り出した記事は約90本に上る。浮き彫りになったのは、協定で在日米軍に認められている特権の弊害と、それを放置したまま協定改定に動かない日本政府の姿だった。米軍ヘリが首都・東京のビルの間で、異常な低空飛行を繰り返す様子を捉えた動画などが大きな反響を呼び、一連の報道は21年度の新聞労連ジャーナリズム大賞も受賞した。
書籍では、首都での異常飛行や基地の島・沖縄の現状、米軍空域を巡る問題などを紹介。紙面やウェブサイトに掲載した記事をそのまま収録することはせず、取材の経緯やそれぞれの記者の悩みや驚きといった心の動きを含めて書き下ろした。
デスクを務めた東京本社社会部の銭場裕司記者は「日米地位協定で起きている問題が分かるだけではなく、記事を出すまでの道のりを追体験できるようにした。ぜひ手に取っていただければ」と話している。