大村紙業は約400社の出版社から物流業務を受託する出版倉庫業の大手だ。埼玉県春日部市に敷地面積1万4800坪、延床面積1万2500坪、在庫冊数3000万冊の「庄和流通センター」を構え、POD で小ロット重版を可能にする「BOD(ブックオンデマンド)」事業といった、倉庫業にとどまらないサービスも提供するなど、出版社を支える体制を整える。10月1日にはこうした自社の各事業を動画で紹介するホームページリニューアルを行った。また、BODのキャンペーンを展開し、出版社から大きな反響を得たほか、物流面では「フリーロケーション」や「ゾーン・ピッキング」を導入するなど、進化を続けている。
物流拠点・システム整備に注力
同社は「庄和流通センター」を中心に6拠点で総在庫冊数6800万冊(良本4100万冊、返本2700万冊)、在庫点数16万点を管理。平均的な月間業量は新本入荷数500万冊、返本入荷数200万冊、直送出荷(宅配便等)100万冊、取次出庫数(アマゾン出荷含む)300万冊、改装冊数90万冊の規模を誇る。
中心となる「庄和流通センター」には移動式ラック3基、書籍自動仕分機2台、トライオート3台、自動研磨機2台、自動カバー取り外し機3台、古紙圧縮梱包機1台、オンデマンド印刷機カラー・モノクロ各1台を配備。
システム整備にも注力し、取引出版社が在庫や入出庫の状況を確認したり、出荷や改装、断裁などを指示できるWebサービス「OS―WEB」の提供や、新出版ネットワーク対応やアマゾンとのEDI連携、書店などからの注文情報の完全デジタル化、取次請求業務代行といったサービスメニューを拡充している。
ホームページでコンセプトなど動画公開
リニューアル後のホームページでは動画を掲出する。動画は「コンセプト」、「サービス全般」、「BOD」、「コールセンター」、「商品保管」、「取次出庫」、「直送出庫」、「返品入庫」、「改装処理」、「受注実績」、「OS―WEB」、「断裁処理」の12本。いずれも1~2分と見やすい長さで製作した。
コンセプト動画では、自社を「出版物流アドバイザー」と位置づけ、サステナビリティ―やイノベーションを実現するため、各事業を「Rethink」「Reuse」「Reduced」「Recycle」などに位置づけ、これらに共通するReを冠した「Re出版」で出版業界に最適化、改革を新たに提案していくことをコンセプトに掲げている。
大村直紀社長は動画の中で「お客様の声が教科書だった」と述べ、それに基づいて自社のサービスを構築したと話している。
「BOD」は50部から最短3日で制作する体制。「コールセンター」は庄和流通センターに5人と幸手流通センターに5人を配し、書店からの電話やFAX、メールなどの受注に対応するほか、受注情報の電子化など、出版社の要望に対応してカスタマイズしたサービスを提供する。
「商品保管」はパレット単位でのRFIDによる棚管理を実施し返品・良品を管理。「取次出庫」と、献本・個人などを含めた「直送出庫」ではリストチェックとバーコードスキャンによるダブルチェックを実施。「返品入庫」はバーコードによる検品体制を徹底し、「改装処理」オートメーション化を実現している。
「受注実績」はスリップやFAXの注文を入力しているほか、出版社がWebで17時までに入力した注文は当日扱いで出庫する。「OS―WEB」は取引出版社がウェブ上で良品・返品の在庫状況などを確認したり、直送出庫の状況をトレースできるサービスも提供する。
「断裁処理」は出版社の負担金なしで行うことが可能で、年間2万トンの実勢を持つ。
ホームページではこうした業務の紹介のほか、取引出版社の一覧を掲載し、こうした出版社の声も紹介する。現在、情報の集約を進めており、10月中には公開の予定だ。
BODキャンペーンに大きな反響
BOD事業は2015年6月から開始し、この6年間で40社ほどの出版社が利用し、月間3000冊ほど制作している。一度利用した出版社の95%が定期的に製作するなどリピート率が高いサービスだ。
今年3月にオンデマンド機を更新し、フジフィルム製のモノクロ機「Revoria Press E1136P」とカラー機「Versant 3100i Press」を導入。いずれも印刷精度が向上し、特にカラー機は調整の幅が広がったことで、出版社からのシビアな要望にも応えられるようになったという。
機器更新に合わせて6月からは、「BOD」を利用したことのない取引出版社にデータの受け渡し方法や品質を確認してもらうため、無料で1社につき2点各1冊のサンプルを制作するキャンペーンを開始。さらに9月までのキャンペーン期間中は作成したサンプルを50冊まで無料で提供した。
キャンペーンで反応のあった出版社は45社と、これまでの利用出版社の数を上回るほどだった。このうち半数ほどがすでにサンプルを制作し、実際に300~500冊の制作依頼も入っている。
同社では、もともとリピート率が高いニーズのあるサービスだけに、これをきっかけに「BOD」を活用する出版社が増えるとみている。
「ゾーン・ピッキング」導入
物流事業では、9月1日から一部の出版社で、動きの速い商品と遅めの商品をゾーンに分けてピッキングする「ゾーン・ピッキング」を導入。これに伴い在庫の置き場所を固定しない「フリーロケーション」も実現した。
「ゾーン・ピッキング」は新刊や重版など動きの速い商品を手前に置き、そのほかも出荷スピードに応じてゾーンに分けて配置。奥に行くほど出荷スピードが遅い商品になる。これによって、ピッキング作業で動く範囲を狭くすることができ、生産性の向上につながる仕組みだ。
同社では、以前はISBN順でピッキングのレイアウトをしていたが、18年前に棚番管理を開始。しかし、基幹システムが対応していなかったため、フリーロケーションは実施できなかった。
しかし、この3年ほど物流管理システム「WMS」をカスタマイズしてフリーロケーションへの対応を可能にした。これによって、出荷数によって絶えず在庫の置き場が変わる「ゾーン・ピッキング」も導入できることになった。
「ゾーン・ピッキング」は商品アイテム数が多く、出荷数が多く、動きがはっきりしている商品でより有効なため、稼働点数7500点というこうしたタイプに合う出版社でスタートした。
ピッキングエリアには、動きに応じたA~Gのゾーンを設定。特に動きが速い新刊や重版などは棚に入れずパレットで保管。そのほかは動きが速いほど棚のスペースを大きくとっている。
「ゾーン・ピッキング」を実施しても従来に比べて保管スペースを広くする必要はなく、作業効率が向上するという。また、フリーロケーション導入によって、従来は1日のタイムラグが発生していたロケーションの登録がリアルタイムに反映できるようになった。
こうして、同社は物流作業から「BOD」による生産出荷体制づくりなど、出版流通の変化に対応する進化を続けている。
大村紙業株式会社
代表者:代表取締役 大村 直紀
所在地:〒121-0064
東京都足立区保木間1丁目10番11号
創 業:昭和35年4月1日
従業員:約600名
庄和流通センター
所在地:〒344-0113
埼玉県春日部市新宿新田14
T E L:048-718-3231
F A X:048-718-3230
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