東京都書店組合 新プロジェクト「#木曜日は本曜日」スタート 著名人らが「街の本屋」の魅力を発信

2022年10月7日

 東京都内にある中小書店が中心となって組織する東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は10月6日、継続的、習慣的に本屋へ足を運んでもらうことを目指した新たなプロジェクト「#木曜日は本曜日」を始めた。同日から特設サイト(https://honyoubi.com/)をオープンし、一週間に一度、毎週木曜日に本屋と本を愛する著名人、インフルエンサー、作家らのインタビュー動画を公開する。また、彼らが選書した本を都内約180店舗で販売する。第一弾として、俳優・歌手の上白石萌音さんが出演するインタビュー動画を公開している。

 

プロジェクト発表会に出席した上白石萌音さん(八重洲ブックセンター本店)

 

 同組合によると、2022年1月時点の加盟店舗数は287店。1984年の1426店のピークから8割程度減少しているという。街の本屋が生き残っていくために、読書推進・増売運動・共同購買・取引条件改善などに取り組んでおり、今回の新プロジェクトもその一環となる。

 

 「#木曜日は本曜日」プロジェクトでは、「本屋のピンチを救いたい」との思いに共感した著名人・インフルエンサー・作家の十数人に「人生を変えた本」を選書してもらい、本屋での本との出会い・エピソードを語ってもらうインタビュー動画を順次公開する。選書してもらった本は、同組合加盟約180書店で販売。SNSキャンペーンの実施や、購入特典として本棚をイメージした「#木曜日は本曜日 限定しおり」の店頭配布などを行う。

 

(左から)井之上健浩常務理事(久美堂社長)と渡部満副理事長(教文館社長)

 

 プロジェクトが始まった6日には、東京・中央区の八重洲ブックセンター本店で発表会を開催。上白石さんも出席し、自身が選んだ10冊を発表したり、POPを作成するなど「書店員」を体験。多くのメディアが取材に訪れた。

 

 発表会の冒頭、同組合・井之上健浩常務理事(久美堂社長)がプロジェクトの概要を説明。「結論から言うと本屋は今、大ピンチだ。書店業界も規模縮小が続いている。電子書籍やネット通販の普及、コロナ禍による来店客の減少、キャッシュレスの普及による利益の減少といった理由が考えられる。書店はもともと薄利多売のビジネスモデルだが、電子決済手数料が少ない利益を圧迫する原因となっている」と強調。

 

 そのうえで、「本屋は知との出会いの場。ネットで購入できるのはあらかじめ知っていた買いたい本。これに対して、本屋では自分が知らない本や、自分が好きだと思っていなかった本に出会うことができる。そんな本屋がこのままでは無くなってしまう。そこで私たちはお客様が継続的、習慣的に本屋に来たくなるきっかけを作るプロジェクトを立ち上げた」と語り、「一週間に一度、木曜日にはぜひ本屋に来て、いろいろな本との出会いを」と呼びかけた。

 

 同じく登壇した同組合・渡部満副理事長(教文館社長)も、「本屋が本当にピンチだと、皆さんに知っていただきたい。今はネットでいつでもどこでも本を買うことができる。しかし、例えば、自分の人生を思いがけない方向に導いてくれるような本との出会いは、ネット上ではなかなか起こらないのではないか」との思いを語り、「幸いなことに(今回の企画に)数多くの著名人、作家、インフルエンサーが共感してくれた。このピンチから本屋を救おうと立ち上がってくれた。この動きが東京だけでなく全国の書店、出版社も巻き込んで広がってほしい」と期待した。

 

新プロジェクト「#木曜日は本曜日」がスタート

 

 読書好きを公言している上白石さんは「このプロジェクトの一環で、南麻布の小川書店を訪れたが、猫好きな書店員さんたちに薦められて、猫の絵本を買った。人に紹介してもらった本は記憶にも残るし、その人との思い出にもなる。本屋ならではの出会いがある」と語った。

 

 また、自身の人生を変えた本として10冊を発表。中でも、本屋で出会って運命だと感じたという本に伊坂幸太郎著『アイネクライネナハトムジーク』(幻冬舎)をあげた。上白石さんは同書の魅力を語ったうえで、「自分がひとりぼっちだと思っている人にぜひ読んでほしい本」と薦めた。

 

 本屋の魅力について聞かれると、「人が作っている空間なんだと改めて感じた。書店員さんが読んでほしいと思う本、誰かに合うだろうなと思った本が置かれていて、『本』と『人』とを本屋で働く『人』がつないでくれる本当に温かい場所」と話し、「本も人が書き、人が編んでいる。本屋も人がたくさん集まり、にぎやかで楽しかったり、静かで温もりのある場所。この機会に、本や本屋への愛がさらに深まった」と笑顔をみせた。

 

 最後に、本屋への応援メッセージを求められると、フリップに「(本屋に)一生通います!」と書き込み、会場をわかせた。

 

本屋への応援メッセージを発表する上白石さん