日本新聞協会は9月30日、第29回「新聞配達に関するエッセーコンテスト」の入賞者を発表した。新聞配達や新聞販売所に関するちょっといい話、新聞販売所スタッフとの心温まるエピソード、新聞配達の経験などを400字程度にまとめたエッセーを募集。今回は3596編の応募の中から、「大学生・社会人」「中学生・高校生」「小学生」の3部門でそれぞれ最優秀賞、特別審査員を務めるお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの吉田敬氏が選んだ審査員特別賞などを決定した。
各部門の受賞者は次のとおり(順不同・敬称略)。
〈最優秀賞〉
「大学生・社会人部門」大野 洋子(神奈川県南足柄市)
「中学生・高校生部門上岡 京史(山口県田布施町)
「小学生部門 長谷川 琥珀(北海道石狩市)
〈審査員特別賞〉
「大学生・社会人部門」小野寺 有紗(岩手県矢巾町)
「中学生・高校生部門」川野 蓮(宮崎市)
「小学生部門」瀬之上 綾音(東京都中央区)
〈優秀賞〉
「大学生・社会人部門」渡邊 由紀(名古屋市)
「中学生・高校生部門」横井 桃那(香川県丸亀市)
「小学生部門」佐藤 蒼維(秋田県横手市)
最優秀賞「大学生・社会人部門」
「一期一会」
大野 洋子(54歳)神奈川県南足柄市
インターホンが鳴り玄関に出ると、スーツ姿の見知らぬ青年がいた。私を見るなり、「これ、皆さんで食べてください」と菓子折りを差し出し、深々と頭を下げた。
「どちら様ですか?」と尋ねると、「先月まで、新聞配達のバイトをしていた〇〇です。こちらの家の方から毎年、元旦の配達時に、お年玉をもらってました。年配の女性が、元旦だけは玄関で待っていてくれて、大変だね、と言って僕の手にお年玉袋を握らせてくれました。高校1年から大学卒業までの7年間、頂きました。就職して、初任給をもらったので、今までのお礼に来ました」と教えてくれた。
私は、驚いた。今どき珍しい、なんて律義な青年なんだろうと。今、母は入院中であることを伝えると、青年は心配そうな面持ちで帰っていった。
後日、母の面会に行ったときに青年が訪ねて来たことを伝えると、脳梗塞の後遺症で言語障害を患った母の目から、涙があふれて落ちた。
最優秀賞「中学生・高校生部門」
「町の裏方防衛隊」
上岡 京史(17歳)山口県田布施町
とある夏の日の明け方、私は雨音で目を覚ました。この日は台風が来る予報となっており、明け方から強い雨が降っていた。私はふと、時計を確認してみた。朝の4時前だった。もう少し寝ておこうと思ったその時、家の外から郵便受けに何かを入れる音がした。私は気になり、レインコートを着て外に出た。
郵便受けには新聞が1部と手紙が1通入っていた。私はその二つを手に取り家の中へと戻った。そして手紙を読み、私は衝撃を受けた。なんとその手紙は新聞配達の人が書いたものだったのだ。手紙には「台風の影響で道が進みにくい状態となっております。皆さまどうぞお気を付けください」と書かれていた。新聞配達の人は大雨の中、進みにくい道を通り、配達先の人全員に新聞と外の状況を説明する手紙を配達し、安全を呼び掛けてくれたのだ。自らを危険にさらしてでも他の人の安全を守ろうとする姿勢に私は感動した。
その日からもうすぐ1年がたつが、私はこの日の感動を今も忘れていない。
最優秀賞「小学生部門」
「暗闇の中で」
長谷川 琥珀(10歳)北海道石狩市
平成30年9月6日午前3時過ぎ、北海道胆振東部で起こった地震のときにぼくのお母さんは新聞配達をしていました。配達途中に大きな揺れがあり、数分後、信号や電柱のあかりが消え、何も見えなくなったそうです。
真っ暗な中、車のライトをたよりに、家を探し、新聞を届けました。暗い中の配達だったので、その日はいつもより時間がかかったそうです。
大きな地震の後の配達で、とても不安でしたが、新聞を届けたおうちの人から「ありがとう」と言われ、すごくうれしかったそうです。
その時の話をお母さんから聞いたとき、暗くても、こわくても、新聞を配ろうとするプライドはすごいと思いました。
こんな地震などの災害のときでも、新聞を毎日届けている配達員さんたちのおかげで、今何が起こっているのかを知ることができます。いつも届けてくれてありがとうございます。