秋の読書推進月間「本との新しい出会い、はじまる。BOOK MEETS NEXT」のオープニングイベントが10月27日、東京・新宿区の紀伊國屋ホールで開かれ、一般観覧者、出版業界関係者ら約300人が来場した。記念講演で作家の今村翔吾さんが「本の旅」をテーマに語ったほか、女優で作家の中江有里さんと作家の角野栄子さんによる対談も行われた。
冒頭、運営委員会委員長の紀伊國屋書店・高井昌史会長兼社長があいさつ。「今年は各団体の枠組みを超えて、今までにない大きなムーブメントを起こしていきたい。単発的な企画に留まるのではなく、地域の区別なく、全国の書店が一丸となって取り組む活動を展開していく」と説明。「今回のプロジェクトで、組織の壁を越えて一致団結し、全国の書店で読書の楽しみや価値を再認識してもらう機会にしたい。次年度以降も関係をより強化しながら続けていきたい」と呼びかけた。
出版文化産業振興財団(JPIC)の松木修一専務理事が、同日立ち上げたキャンペーンサイトを示しながら、企画の概要を紹介。侍ジャパン監督の栗山英樹氏、作家で日本文藝家協会の林真理子理事長ら7人をアンバサダーに任命したことを発表。全国の書店で開催されるイベントの一覧も掲載されており、「27日現在で1910書店、3017の企画がエントリーされている」と明らかにした。
続いて、講演した今村さんは2021年に大阪の書店「きのしたブックセンター」を事業継承したり、今年5月から118泊119日かけて全国の書店や学校を行脚してきたことなどを紹介。「全国をまわって、私ほど今の書店の現状を見てきた人間はいないのではないか。最も感じたことは『本屋は死んでいない』『書店はあきらめていない』ということ。前向きな希望を語る人が多く、心強かった」と期待。
また、「若者の読書離れというが、小・中・高校生はそれほど離れてはいない。深刻なのは19歳から25歳あたりが、数多くある娯楽の中で『本』を選ばなくなっていることだ」と指摘。そのうえで、「娯楽の1位から『本』は陥落している。それをどうやって奪還するか。だからこそ、今回のように全国の書店、出版社、取次、作家、読者が一丸となって、挑戦者として立ち向かう取り組みはとても素晴らしい」と訴えた。
続いて、対談した中江さんも、「私はうれしい時、楽しい時、苦しい時など書店を訪れては、その時々の記念になるような本を買っている。そのように、本屋さんを通じて自分の記念日を作っていくのもおもしろいのではないか」と来場者に提案した。
角野さんも全国の書店に対して、「私にとって書店はワンダーランド。知り合いが子どもの本屋をやっているが、とてもパーセントが少ないという話をよく聞く。もう少し出してあげたらいいなと思うが、好きで本を売ってくれている人たちがたくさんいるのは、とてもありがたいこと」と感謝した。