共同通信×講談社 新聞小説連載プロジェクト開始 初回は清武英利氏の初小説

2022年11月7日

 

 

 共同通信社と講談社は11月1日から、新聞小説連載プロジェクトをスタートした。初回は同日から「デーリー東北新聞」(青森県八戸市)で掲載が始まった『青鞜(せいとう)の男』。『しんがり 山一證券 最後の12人』『石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの』『トッカイ バブルの怪人を追いつめた男たち』など、ノンフィクションジャンルで活躍してきた清武英利氏による史実に基づいた初の歴史大河小説。以降、各地方紙でも順次連載開始予定となっている一大プロジェクトだ。

 

 女性の社会進出にも大きな影響を及ぼした「シームレスストッキング」を開発したストッキング企業の創業者の一代記とともに、戦後の日本税務制度の創設を描く歴史大河小説『青鞜の男』。

 

 著者の清武英利氏は、初の小説執筆ながらも、大胆な筆致で戦後直後を駆け抜ける男を生き生きと描いているという。さらに、自身の記者時代からの精密な取材・分析が存分に活かされており、「圧倒的リアリティによって日本の戦後直後から昭和の好景気までの匂いが立ちのぼってくる骨太な作品」となっている。

 

 連載期間は約1年の見通しで、順次各地方紙でも連載を開始する予定。書籍化は2024年以降を予定している。

 

清武英利氏の話

 

 私がかつて生きた新聞記者の世界には「佇まい」という言葉がありました。「取材する姿勢」、さらには「生きる姿勢」という意味ですが、正面からそう言うのが気恥ずかしく、少し斜に構えて先輩記者たちは美しい生き方を語るのです。私は飲み屋で受ける説教や教訓話が大嫌いでしたが、「佇まい」と言われたときだけは耳を傾けることにしていました。
 『青鞜の男』では、混乱の戦後を生きた二人の男の鮮烈な佇まいを描きます。主人公は「後塵を拝さず」という経営者です。その対極に「明日を期せず」という国税組織の礎となった人物が登場します。
 私が四半世紀以上も追い続けてきた人たちですが、ノンフィクションという水彩画であれほど描きにくかった複雑で強烈な個性の二人が、小説手法という濃い油絵で描くと、内面まで筆が届くような気がしています。人間を描く道は多様であることは言うまでもないものの、昭和に佇む二人はこの手法を待っていたのではないか、と思っています。