大修館書店は11月8日から、8年ぶりの全面改訂となる『ジーニアス英和辞典 第6版』の発売を開始した。1987年の初版刊行以来、高校生から大学生・社会人まで幅広い層の人たちに利用されており、英和辞典市場でトップシェアを維持。今回、SNSで使われるようになった表現や新語・時事用語といった新たな語句を多数増補するなど、これからも使われ続けるため、さらに進化させた。新版の発売に合わせ、デジタルメディアなどを使って、紙の辞書の良さを再認識してもらうプロモーションも展開していく。
発売から35周年を迎えた『ジーニアス英和辞典』は、「語法のジーニアス」と呼ばれる充実した語法解説などを特長に、高等学校などの教育現場で信頼性の高い辞典として評価を得てきた。2014年に刊行した第5版から8年ぶりの全面改訂で、第6版の収録語句数はこれまでで最も多い10万6000と、学習英和辞典として最大規模だ。
第6版では、「social distance」(ソーシャルディスタンス)、「egosurf」(エゴサーチ「自己検索」をする)、「instagrammable、instagramable」(インスタ映えする)──など、時世を反映した新たな語句も多数増補した。
また、英語への興味が深まり、学習への手がかりにもなるコラム「英語史Q&A」「語のしくみ」を入れているのも特長のひとつ。例えば、「英語史Q&A」では「childの複数形はなぜchildren?」といった英語に関する素朴な疑問を、語源や言葉が使われてきた歴史を踏まえて解説。「語のしくみ」も単語の語構成をわかりやすく解説しており、辞書で言葉を調べるだけでなく、読みながら考えたり、学んだりできる工夫も散りばめられている。
さらに、「つなぎ語(句)」を具体例とともに解説しているのも大きな特長だ。「anyway」や「finally」といったつなぎ語(句)に、「話題転換」「会話の終了」「願望の実現」といった解説を付けた。これによって、「大学入試共通テストや民間英語試験などのまとまった文章での論旨の変化にも対応できる」と薦めている。
「紙の辞書を開く楽しみ」提供
大修館書店企画推進部の富永七瀬氏は「今はデジタル全盛で、分からない言葉をただ調べるだけならネット検索の方がスピーディーかもしれないが、新たに設けたコラムや解説などを通して、紙の辞書を読んでいく楽しみも提供したい」と語る。
同じく企画推進部の髙橋寛氏も「助動詞・前置詞など基本語を徹底解説していたり、『語法のジーニアス』の名に違わぬよう語法欄をさらに充実させるなど、これまで好評だった事項は引き続き、進化させて掲載している」と強調する。
新聞広告、デジタルなど多面プロモ
紙の辞書には一覧性やセレンディピティ(偶然の出会い)、記憶の定着など、ネットの「検索」では得られないさまざまな効用がある。今回の新版刊行を機に、より幅広い層の人たちに紙の辞書の良さを改めて知ってもらおうと、さまざまなメディアを使ったプロモーションも展開する。
新聞読者層は辞書との親和性が高いことから、発売に合わせて全国紙での1面ジャック、全5段広告の出稿を実施。地方紙にも出稿する予定。発売直後には、全国の主要書店で店頭ディスプレイ広告を掲出したり、フェア台を設けて大きく展開する。
また、高校生や保護者、教員に紙の辞典を使うメリットを訴求するため、ツイッターやユーチューブも積極的に活用する。東大院生の紀野紗良さんや筑波大学の磐崎弘貞教授、毎日新聞校閲記者の平山泉さんらへのインタビュー動画、「ジーニアスブランド」をエモーショナルに訴えかける動画を配信する。
さらに、新刊告知や新学期の商戦時期に合わせて、SNSに広告を出稿する。特設サイトに誘導しながら、拡売を目指す。髙橋氏は「書店の皆様にはぜひ、『毎日1ページでも開いて読んでみて』と薦めていただきたい。読者にとって何か新しいことが発見できるよう、作り手として努力を積み重ねてきた」と呼びかける。
富永氏も「この分厚い本の量と質を実際に手にしてもらえたら、デジタルでは味わえない紙の辞書の良さを改めて実感してもらえるだろう。新しいジーニアスを持っていることがうれしい、手元に置いて英語に触れることが楽しいと思える辞書に仕上げた。ぜひ書店で多くの人に届けてほしい」と期待している。【増田朋】